新しい行動パターンを使えばよいと分かっていても実践は容易ではありません。
けれど依存症者やACは新しい行動パターンを使わないとスリップしてしまうところに追い込まれます。
この記事は実践可能な新しい行動パターンについて解説しています。
1.人格の構成と人格を変えていく方法
人格は考え方・感じ方・行動の仕方の三つのパーツからなっています。(ACのための12のステップ44頁下3行目)
通常の場合は考え方と感じ方から指令が伝達され、それが行動の仕方(行動パターン)となります。
心理的領域にはコンフォートゾーン・ストレッチゾーン・パニックゾーンの三つがあります。
考え方と感じ方から発せられる行動の仕方(行動パターン)はコンフォートゾーンにあります。
コンフォートゾーンとは実践するのに少しも抵抗のない使い馴れた領域を指しています。
考え方と感じ方から送られてくる指令に従ってごく自然にいつもの行動を行います。
それに対して行動の仕方を変えようとするときは【考え方・感じ方】からいったん行動の仕方を切り離す必要があります。
理由はそうしないといつまで経っても行動パターンを変えることができないからです。
この新しい行動パターンはストレッチゾーンないしはパニックゾーンにあります。
新しい習慣を身につけるのが難しいのは【行動の仕方】が【考え方・感じ方】に支配されているからです。
ある人は考え方と感じ方を変えない限り、行動の仕方も変わらないと考えます。
この考えは一見筋(いっけんすじ)が通っているようにも思えます。
しかしこの理解には致命的な欠陥があります。
それは考え方と感じ方は長年に渡る行動の仕方の積み重ねによって出来上がったものだということです。
だから「変えましょう!」と言って、一朝一夕に変わるものではないのです。
このようなわけで考え方と感じ方を変えることによって行動の仕方を変えようとする努力は徒労に終わります。
では何が解決策かと言えばそれは【行動の仕方】を【考え方・感じ方】から一旦切り離すことによって、【行動の仕方】を全面的に変えてしまうことです。
依存症からの回復のプログラムである12ステップはこの切り離しをスムーズに行わせてくれるプログラムです。
【行動の仕方】を【考え方・感じ方】から切り離す方法は霊的に目覚めることによります。
霊的目覚めは12ステップに取り組みさえするなら誰にでも実現すると約束されています。(ビッグブック121頁7行目)
12ステップが提供する【霊的目覚め】は別名を【回復するのに充分な人格の変化】と呼ばれます。(ビッグブック266頁2行目)
12ステッププログラムに真剣に取り組むなら、通常の方法では困難な人格の変化が二・三ヶ月のうちに起きてしまうのです。(同267頁7行目)
これは取り組まないわけにはいかないと、ありのパパは思うのですが、この記事をお読みのあなたはいかがでしょうか?
下記に人格を変えていく仕組みを載せます。
人格の内部の働き
通常のケース | 意識的に人格を変える方法(霊的目覚め) | 人格が変わり続ける方法(続けるステップ) |
---|---|---|
行動パターンの積み重ね | 【行動の仕方】と【考え方・感じ方】を切り離す決心 | 即座に、例外なしに、全面的に、新しい行動パターンを使い続ける |
⇩ | ⇩ | ⇩ |
考え方・感じ方が形成される | 人格を変え続ける準備が整う | 考え方・感じ方が徐々に変化していく |
上記の表をご覧になるとお分かりのように人格を変えるにはまず行動パターンを考え方と感じ方から切り離します。
そしてその次に新しい行動パターンを全力で実行し続けます。
そうすると何年もの期間を経て考え方と感じ方が徐々に変わっていきます。
これをお読みになってため息が出られたでしょうか?
それとも「よし、変わる方法が分かったのだからとにかくやってみよう!」とお思いになられたでしょうか?
後者であることを切に願っています。
2.新しい行動パターンには効果のあるものとないものがある
古い行動パターンはコンフォートゾーンにあります。
これは使い馴れた手ですが、使い続けると人生を棒に振ります。
新しい行動パターンは本来はストレッチゾーンになければなりませんが、実践不可能に思われる行動パターンだとパニックゾーンに入ってしまいます。
文字通り「そんなもん、できんがな」という茫然自失(ぼうぜんじしつ)の世界です。
だから新しい行動パターンなら何でも良いというわけにはいきません。
それはどうしてもあなたから見て「これだったら実践できそう!」と思えるものでなければなりません。
ありのパパなどは「どうせ神の力を頂いて実行するのだから、何だって良いのでは?」などと不遜なことを考えていました。
しかしそれが真実なら神は人間をロボット扱いしていることになり、神の基本的なご性質に反します。
ステップ3には「自分の意志と生き方を神の配慮に委ねる決心をした」とあります。
日本的な文化のもとにあると「お任せしたのだから、あとは私がすることはない」などと思いがちですが、実際はそうではありません。
かえって今までよりも忙しくなるくらいです。
なぜなら人生途上で起きる一つ一つのことを祈りと黙想を通して神の意志を知り、それを実践する力だけを求めるからです。(ステップ11)
ここで大切なことは「その新しい行動パターンは実践可能か?」ということです。
例えばコンフォートゾーンにある古い行動パターンが「恐れが動機の不正直行動」だったとします。
そうすると多くの人は機械的に正反対の「恐れないで正直に生きる」ことを新しい行動パターンとしがちです。
しかしこのような人に「あなたはそれを実践できますか?」とお尋ねすると全員が「出来ないですね」と仰っしゃり、大爆笑します。
この場合の「恐れないで正直に生きる」行動パターンはパニックゾーンにあるのです。
あまりにも実現可能性がなく、文字通りパニックになっているのです。
コンフォートゾーン | ストレッチゾーン | パニックゾーン |
---|---|---|
古い行動パターン | 実践可能な新しい行動パターン | 実践不可能な新しい行動パターン |
⇩ | ⇩ | ⇩ |
人生が破滅する | 人生が変わり続ける | 人生が空回りし続ける |
(解決策)実践可能な新しい行動パターンに取り替える | (解決策)新しい行動パターンを実践し続けるだけでよい | (解決策)どこに無理があるのかを検討し、実践可能な新しい行動パターンに取り替える |
以上の説明で新しい行動パターンはストレッチゾーンにあるものでなければならないということがお分かりいただけたでしょうか?
次の項目では実践可能な新しい行動パターンを考え出す方法について解説します。
3.自分の長所から新しい行動パターンを探し出す
新しい行動パターンを考えるときに大切なのはご自分の長所を参考にすることです。
例えばある人は黙り込むのが短所だったので、新しい行動パターンを「ポンと言う」としました。
なぜならこの方の長所が機会を逃さずに凝縮した一言を言えるところにあったからです。
これをありのパパに適用できるでしょうか?
いいえ、決して出来ません。
なぜなら昼間(ひるま)に人に嫌なことを言われて、それへの答えがその日の夜に浮かぶというような性質の持ち主だからです。
もしありのパパが「ポンと言う」を新しい行動パターンに設定したら、一度も実践できずに文字通りパニクってしまうでしょう。(パニックゾーン)
ある人は新しい行動パターンを「人に与える姿勢を貫く」としました。
今までは人になにか言われて傷つけられるのではないかと恐れて人生を生きてきたのですが、これからは[私が人に良いものを与える]生き方へと転換を図ったのです。
これもありのパパには決して実践不可能な行動パターンです。
なぜなら「私が人様に与えるなんてとんでもございません」と思うような性質の持ち主だからです。
良く言えば謙遜、悪く言えば卑屈。
しかしこれを変えようとしてはなりません。
というか決して変わりません。
なぜなら性質・気質は生まれ持ったものであり、変えられないからです。
変えられるのは後天的に取得した性格だけです。
皆さんの新しい行動の仕方はパニックゾーンではなくストレッチゾーンにありますか?
すべての人に敬意と配慮をもって接することに全力を尽くすとはどういうことか?
ちなみにありのパパの新しい行動パターンは[すべての人に敬意と配慮をもって接することに全力を尽くす]です。
「何を言っているのか分からない」と今まで多くの人に言われてきました(笑)。
ありのパパには説明が必要のないことであっても、他の人々には充分な説明をお付けしないとチンプンカンプンな文章であったわけです。
「そもそも『敬意』って何ですか?」と聞かれた方もいました。
「それぐらい自分で辞書引けよ」と瞬間思ったのですが、「いや待てよ。この方がお聞きになりたいのは単語の意味ではなく、『自分が実践できるようにもっと噛み砕いて説明して欲しい』ということではないのか」と思い直したことです。
私たちの本能が傷つくのは自分の性格上の欠点を使ったときだけです。
そういう意味では【他者は私を決して傷つけることが出来ない】のです。
けれども実際に本能が傷つくのは人間関係のトラブルによります。
人間関係のトラブルが起きるのはこちらの側の【配慮の欠如】が原因です。
たとえば「上司に怒鳴られて私は傷ついたので恨んだ。それで嗜癖に逃げ込んだ」という人がいるとします。
その人に「もしあなたがそのとき上司に怒鳴り返していたら今でも上司を恨んでいたと思いますか?」とお尋ねすると、「いいえ、覚えてさえいないと思います」とお答えになります。
さらに「ということはあなたが上司を恨んだ真の原因はあなたが性格上の欠点の【不正直】を使ったことにあると言えないでしょうか?」とお尋ねすると、「そういうことになりますね」とお答えになります。
この問題の本質は「上司は私に気を使って当然である」(利己的)と考えていることです。
上司だって「部下に気を使って欲しい」と願っているかもしれないのに、自分の願いだけを(それも「口にはしないけど分かれよな」と思っている)相手に押し付けてもそれは理不尽というものです。
【利己的】に振る舞うことを当然と思っているときは【配慮の欠如】が必ず生じます。
この【配慮の欠如】が原因で人間関係のトラブルが発生するのです。
これ以外に人間関係のトラブルの原因はないと言ってもいいぐらいです。
もしその方が「私が配慮してほしいと願っているように、上司も私に配慮してほしいと願っている」ということを心に留めて普段から接していれば、このようなトラブルは起きるはずもなかったのです。
以上のことから次のことが言えます。
【敬意をもって接するとは自分が相手にしてほしいと願っていることをいつも心に留め、相手にそれをしてあげること】
【まとめ】
- 考え方・感じ方・行動の仕方の三つによってなるのが人格です。
このうち行動の仕方だけが即座に、全面的に変更することが可能です。
考え方と感じ方は行動の仕方を全面的に換え続けることによって徐々に変わっていきます。
これは通常何年もの月日を要します。 考え方と感じ方から司令が発せられる行動パターンはコンフォートゾーンにあります。
何も考えなくてもごく自然に行動できますが、これを使い続けるなら人生は変わらないままです。人生を変える秘訣はストレッチゾーンにある新しい行動パターンを使い続けることです。
これは12ステップに真剣に取り組むことによって得られる霊的目覚めによって実現します。
そして私たちがはじめの条件を守り続けるなら、人生は変わり続けるものとなります。人生を変えようと思うなら、新しい行動パターンは実践可能でなければなりません。
実践不可能な行動パターンはパニックゾーンにあります。
文字通りパニクるだけで人生が終わります。人間関係のトラブルが起きるのは配慮の欠如が原因です。
配慮の欠如が起きる理由は利己的振る舞いや不正直・身勝手な行動があります。
だから新しい行動パターンはこれの対極にあるものです。
ご自分の長所の中から「これだったら実践できそう!」と思えるものを考え出します。
◎回復と平安と祝福を祈っています。