子供時代のコントロール欲求は健気(けなげ)でしたが、大人になってからの病的コントロール欲求は自分も周りの人も害します。
この記事は共依存症者が病的コントロールを使う心の構造を明らかにし、そこから回復する方法を解説しています。
1.病的なコントロールは子供時代に機能不全家族で身に付けたサバイバル術
共依存症者やアダルトチルドレンは病的なコントロール欲求を嗜癖として使います。
原因は機能不全家族にあります。
機能不全家族にありのパパが付けた別名は「飼育者のいない動物園家族」です。
動物園の中ではライオンであってもカモシカであっても一匹として生きることに責任を持っている動物はいません。
なぜこれで生きていけるかと言えばそれは飼育者がいるからです。
もし飼育者がいなければ動物たちはたちまち飢えてしまうでしょう。
このような飼育者のいない動物園を人間の家族に例えると機能不全家族ということになります。
誰もが無責任で、ボォ〜としており、ACが一人だけ将来に渡って家族が破綻せずにやっていけるのか不安を感じています。
そのため「自分がやらなきゃ誰がやる」という具合で孤軍奮闘します。
でも子供ですから出来ることはたかが知れています。
この不甲斐なさ・無力感は大人になってからは病的なコントロール欲求に姿を変えて続きます。
2.病的コントロール欲求を嗜癖として使う共依存症者&アダルトチルドレン
子供時代に機能不全家族で孤軍奮闘したアダルトチルドレンが大人になると今度は共依存症者として職場で孤軍奮闘したり、自分のパートナーや子供・友人などを操(あやつ)ろうとします。
ACや共依存症者はこのようなことを切羽詰(せっぱつ)まった感じをもってやり抜こうとします。
自分でもこの[切羽詰まった感]の出どころが分からず、その奴隷となります。
これを嗜癖行為と呼びます。
①コントロール欲求には健全なものと病的なものがある
気を付けないといけないのはコントロール欲求には健全なものと病的なものがあるということです。
リーダーであればそのグループをまとめていく必要がありますし、なるだけトラブルを少なくして目的地に達することも大事なことです。
共依存症の人でどんな問題が起きても「それは私の問題ではない」という人がいたとします。
しかし本当にそれはあなたの問題ではないのでしょうか?
この点は共依存症の当事者と医療関係者の意見は分かれるようです。
医療関係者の共通した意見は病的なコントロールを避ける必要はあるが、もっとも大切なことは問題当事者への援助であるとします。
②病的コントロール欲求の見分け方
健全なコントロールと病的なコントロールの違いは明らかです。
前者は自分の思ったように動いていただくために汗をかきますが、後者は「他者は私の真意を汲んでくれて当たり前」と思っていますから、当然、配慮が欠如します。
配慮が不足すると人はどういうわけか自分の本能(おもに自尊心)が傷つきます。
理由は配慮が不足すると人々の内情が見えないので、「なぜ自分の希望通りにならないのか?」の理由が理解できないからです。
その結果として「あの人(パートナー・子供、職場の上司・同僚)が私の思った通りにならないのは私をバカにしているからだ」とお粗末な思い込みをします。
自尊心が傷ついた時に暴走する感情はおもに恨みです。
恨みの感情が暴走すると怒りを爆発させることを嗜癖として使いがちです。
このようなわけで病的なコントロール欲求の場合は人が自分の思ったように動かないと怒りが出て来ます。
健全なコントロール欲求の場合はその人の事情を理解できていますから、「仕方ない。では今度はどのような働きかけをすれば効果的だろうか?」と自分自身に問います。
そこに怒りが出てくることはありません。
3.病的コントロール欲求から回復する方法
①まず嗜癖として使っていることを気づく
解決の道は病的コントロールを嗜癖として使っていることに気づくことがスタートになります。
そうしたら嗜癖に対して無力を認めることができます。
自分が嗜癖として使っていることを気づかないうちはいくら無力を認めると言っても美辞麗句に過ぎません。
②嗜癖を使う心の構造を正確に理解する(ステップ2)
嗜癖を使うのはいつだって不快感情から逃れるためですから、不快感情が発生する構造を理解します。
私たちは不快感情が発生さえしなければ嗜癖を使わないでいられるわけですから、不快感情が発生するメカニズムを理解することが《回復の設計図》を理解することに当たります。
性格上の欠点からくる行動パターンを使う | 利己的・不正直・身勝手&恐れ・配慮の欠如 |
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その結果、本能が傷つく | 共存・安全・性・将来野心 |
⇩ | |
その結果、感情が暴走する | 恨み・罪悪感・恐れ・後悔 |
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その結果、不快感情から逃れるために嗜癖を使う | 病的なコントロール(共依存症) |
構造を正確に理解できると、その人は回復に対して強い意欲を持つようになります。
なぜならそれまでは原因が分からずに途方に暮れるほかはなかったのに、今は自分が嗜癖を使う原因(構造)を正確に理解できたからです。
これで自分自身の回復に対して強い意欲を持たない人など一人もいないでしょう。
③不快感情を発生させないために行動パターンを変える
嗜癖を使うに至る心の構造を正確に理解できたら今度は自分の中にある恨み・罪悪感・恐れ・後悔の原因を探ります。
感情が暴走するのは本能が傷ついたからですが、どの本能が傷ついたのかを見ていきます。
傷ついた本能が特定できれば、今度は自分の性格上の欠点のどれを使ったので本能が傷ついたのかを特定します。
利己的だったのか、それとも不正直だったのか、身勝手だったのか、あるいは配慮の欠如が原因か?
このようにして原因が特定できたら、今度は本能が傷つかないですむにはどのように行動すればよかったのかを具体的に考えます。
「不正直にならないようにする」「利己的にならずに利他的に振る舞う」などは全部アウトです!
そんな抽象的なことを言っている限り、人生は1mmも変わらないでしょう。
具体的に行動を変えたときに初めて人生は変わり始めるのです。
④具体例
たとえばトラブルが起きて相手にムッとしたとします。
こちら側の原因は二つあります。
一つは利己的です。
「言わなくても分かれよ」と考えていたので、配慮が不足し、起きてなくてもよいトラブルが起きたのです。
「段取り八分に仕事二分」と昔から言います。
もう一つは不正直です。
起きたトラブルに対して毅然とした対応をしていれば何ともなかったものを「この人は初めからこんな人だったんだ」とか「人間関係なんてこんなもの」と考え、トラブルを起こした相手と徹底して向き合うことを避けたのが原因で自分の本能が傷つき、その結果として感情が暴走し、その結果として不快感情から逃れるためにますます病的なコントロール欲求を嗜癖として使うようになったのではないでしょうか?
こうしてみると原因は全部自分の側にあったことが分かります。
「なぁ〜んだ」という感じです。
そこで終わっては人生は1mmも変わりませんから、具体的な対応策を考えます。
利己的考えへの対応策としては「段取り八分!」と常に自分に言い聞かせます。
そうしたらトラブルが起きても「自分の配慮不足が原因か!」と受け止めることが出来ますので、「よ〜し、今度はどうすべ〜」と余裕で考えることができます。
ここに恨みの出番はありません。
不正直への対応策を考える時に見落としてはならないことは不正直の原因は二つあるということです。
一つは「人が怖い」という人への恐れです。
もう一つは相手にも人格があり、問題を抱えて苦しんでいるかもしれないということへの想像力の欠如です。
要するに相手をモノ扱いしているのです(人格の否定ないしは軽視)。
トラブルそのものに目を留めるだけでなく、なぜトラブルを起こしたのかの背景にまで目を留めるなら、必ず「かわいそうに。彼には彼のそうしなければならない理由があったのだ」と思い至ります。
このような心の状態になれば不正直な対応を締め出すことができます。
私たちは往々にして具体策を考えることが面倒くさいと感じます。
でも自分の人生ですから「じゃ、どうしたらいいだろうね」と頭をひねるのです。
これが自分自身の愛ある親になるということです。
【まとめ】
- 共依存症者やアダルトチルドレンは病的なコントロール欲求を嗜癖として使う依存症者です。
アルコールや薬物を嗜癖として使うように病的なコントロールを嗜癖として使っているのです。 回復する方法はまず第一に自分が病的なコントロールを嗜癖として使っているのに気づくことです。
次に嗜癖を使う心の構造を正確に理解します。
そうしたら回復に対して強い意欲が湧いてきます。
これがステップ2で起きるべき心の変化です。不快感情が嗜癖を使う原因であると分かれば、不快感情を発生させないためには行動パターンを変えるしかないと自ずと理解できます。
新しい行動パターンを考え出すときに肝心なことは、具体的でなければ効果がないということです。
この領域での成長は一生続きます。

◎回復と平安と祝福を祈っています。