依存症の構造はみな同じです。
しかし依存症ごとに「独自の特質」があります。
これはその依存症になった人でなければ分からないことです。
この記事は性依存症の独自の特質を明らかにし、それを考慮しつつ回復する方法を解説しています。
1.依存症の構造はみな同じ。だから回復の方法も同じ
「(性依存症も)他の依存症と同じです。それとともに独自の特質をもっています」(ホワイトブック57頁3行目改訳)
性依存症を含めたすべての依存症は構造が同一です。
脳の報酬系に依存症回路ができ、そこから強迫観念と渇望現象が発せられます。
依存症回路ができた報酬系は暴走します。
そうすると前頭葉がになう理性の働きは無力化されてしまいます。
これが私たちが強迫観念と渇望現象に対して無力である理由です。
このように依存症の構造が同一であるなら、回復方法も同じということになります。
12ステップが教えることは
①二つの『問題』(強迫観念と渇望現象)
②無力という『問題の本質』
③二つの『解決策』(共同体の助けと霊的目覚め)
④自分を超えた大きな力という『解決』
①から④はどの依存症であっても共通した回復の方法です。
2.性依存症の独自の特質は性的妄想が繰り返し襲ってくること
性依存症の独自の特質は回復の軌道に乗って数年を経ても性的妄想が襲ってくるということです。
酒や薬物の依存症者の大多数の経験は回復して数年すると飲酒や薬物の強迫観念が消失します。
(個人の経験の差異には大きな開きがあります。18年間、薬物の強迫観念が消えなかったというある中間施設長の証言もあります)
しかし性依存症においてはこの消失経験がないのが一般的です。
では強迫観念はどのような形で襲ってくるかと言うと「性的妄想」という形で襲ってきます。
もちろん心が健康な人々にも性的妄想はあります。
異なる点は性的妄想がトリガー(引き金)になるということです。
性的妄想をもつことに罪悪感を感じる人も多くいます。
というかそれが一般的です。
これの解決法は一択です。
それはパートナー以外との一切の性的交渉を止めるということです。
止めるものの中にはネットポルノの視聴、心の中で弄ぶ性的妄想が含まれます。
このように性依存症者が「本当に性的なシラフの状態になるには渇望を徐々に乗り越えていく過程が含まれています」(ホワイトブック204頁12行目)
この点も他の依存症とは異なる点です。
たとえば癇癪持ち(怒り依存症)なら、とにかく怒りを爆発させないという一点に焦点を当てて回復の道を歩みます。
そしてこのやり方は効果的です。
しかしながら性依存症の回復の方法はそうではありません。
繰り返しになりますが、本当のシラフの状態になるにはいくつかの障害を乗り越えていく過程が含まれています。
これは「こんなものは誰でもやっている」という見え透いた言い訳からの決別であり、本当のシラフを求める気があるのかどうかを問われることでもあります。
3.性依存症の回復の方法と特徴
「性依存症という病の予後について考えると気が滅入る」
「(治ることをではなく)回復を望む人たちだけに…希望は訪れる。嗜癖が支配する力からの解放、罪悪感の消失、正しい生き方を選択する自由、快く生きる術が与えられる」(同57頁22〜26行目)
怒り依存症は怒りを爆発させなければ一件落着です。
そしてこの変化は自分を含めたまわりのすべての人に明らかです。
アダルトチルドレンの回復はまわりの人々には見えません。
ことによったら自分でも回復しているのかどうかがはっきりしないこともあります。
これに対して性依存症は回復しているのかどうかが自分には明確にはわからない部分があります。
なぜなら繰り返し性的妄想が襲ってきますから、「私はいつまでこんな状態なのか?!」という感じになります。
そして性依存症は人の目に触れませんから、変化がまわりの人にも明らかになりません。
こう見てくると性依存症は依存症の構造は他の依存症と同じであっても、回復しようとするときのまわりからの励ましはあまり期待できない依存症であると言えます。
だからこそ自助グループからの助けと支えがより一層重要になるのですが。
回復した性依存症者がまわりの人々に提供できることがあります。
①嗜癖が支配する力からの解放
②罪悪感や恥の感情の消失
③過ちを乗り越えて正しい生き方を選択する自由
④神に対して、自分に対して、他の人々に対して心地よく生きる術
以上の①から④は「自分がまだ手にしていないものを人に手渡すことができないことははっきりして」(ホワイトブック210頁5行目)います。
これらの宝物は性依存症者が12ステップに徹底して取り組むなら必ず与えられると約束されています。
【まとめ】
依存症の構造はみな同じです。だから回復の方法も同じです。
しかしながら依存症ごとに独自の特質があります。
性依存症の独自の特質は性的妄想が繰り返し襲ってくることです。
そして性依存症者にとっての性的妄想はトリガー(引き金)となります。
性依存症者がまわりの人に提供できることは多くあります。
それは嗜癖からの解放、罪悪感の消失、正しい生き方を選択する自由、心地よく人生を生きる術などです。
これらのものは自分がもっていなければ他者に手渡すことのできないものです。
性依存症者が12ステップに徹底して取り組むなら、これらの宝物を必ず自分のものにすることができます。
治ることをではなく回復することを。今日一日だけ。
◎回復と平安と祝福を祈っています。