癇癪などの感情面での問題をもっている人は心に孤独感からくる孤立を抱えている場合が多いようです。
孤立は私たちをして嗜癖に陥らせ、さらに回復の邪魔にさえなります。
この記事は孤立がもたらす弊害をどのように克服すればよいかを解説しています。
1.孤立は嗜癖に陥らせ、回復の障害となる
孤立を抱えていることは嗜癖に陥る原因の一つになりますが、同時に回復の営みの障害にもなります。
①孤立は私たちを嗜癖に陥らせる
他の人々から孤立していると自分の希望を述べることができません。
それでどうなるかというと「仕方ない。自分が自分の希望を述べなかったのだから、自分の思い通りにならないのは当たり前だ」と思う人はいません。
どう思うかというと「私は本当は○○が良かったのに、あの人は人の気持ちがわからない人だ。もう〜!」と考えるのです。
これを他人事として読んでいる間は「バカじゃないの!?」と思うだけです。
しかし私たちは大なり小なりこのような傾向を持っているものです。
そして本当の原因は自分の不正直にあるにもかかわらず、他人に傷つけられたと誤解し、人々を恨みます。
その恨みの感情から逃れるために嗜癖を使うというわけです。
この嗜癖に陥る行程を客観的に見ると「もうかなわんな!」とでもいうしかありませんが、しかしいざ自分のこととなると分からないのです。
分かったら誰も依存症にならないし、アダルトチルドレンになりません。
分からないからこそ気がついたら依存症になっていたり、アダルトチルドレンになっていたり共依存症になっていたりするのです。
②孤立は私たちの回復の障害になる
感謝なことに「このままではダメだ!」と我に返る経験(底つき経験)をして自助グループに参加するようになります。
しかしここでも孤立は私たちの回復をしようとする営みの妨害をします。
それは孤立しているのでスポンサーを信用することができないし、ステップ5で自分の秘密を話すなど論外に感じます。
でも12ステップ本には「自分の秘密を洗いざらい話さない限り回復は不可能」と書いてあるので、恐る恐る小さな一歩を踏み出します。
ありのパパもまわりにスポンサーやシェアリング・パートナーになってもらえそうな人がいなかったので中間施設と呼ばれる施設の職員さんに第五ステップパーソンになってもらいました。
(シェアリング・パートナーとか第五ステップパーソンとは棚卸しを聞くステップの5だけをやってもらう人を指します。これに対してスポンサーは12ステップ全体を請け負う人を指します)
シェアリング・パートナーになってもらいたいという方の希望を受け付けています。
詳しいことは下記を参照してください。

孤立を抱えている人の本心は「自助グループに参加するだけで孤立を乗り越えるためにエネルギーを使い果たした。とてもスポンサーシップに使うエネルギーは残っていない」というものかもしれません。
しかしそれでは決して回復しません。
そもそもミーティングはグループセラピーではなく「自分はどのようにして12ステップに取り組んでいるかを分かち合う」ものです。
スポンサーなしで、ステップの5なしでは12ステップにどのように取り組んでいるかを分かち合うことはできません。
ミーティングは「この箇所を読んで自分はどのように感じたかの感想」を述べ合う場所ではなく、「この箇所に自分がどのように取り組んでいるか」を分かち合う場所です。
残念ながら感想を述べている間は人生は1mmも変わることがありません。
2.孤立をある程度軽減して12ステップに取り組めるようにする
「強い不安…は欠点を軽視する原因になりうる」(How It Works34頁18行目)。
強く不安を感じていると自分の性格上の欠点に取り組むことは事実上不可能です。
ガクガクブルブルしている人が腰を据えて「自分の問題に直面する」などというのは絵に書いたモチでしかありません。
またこれが多くの人が棚卸しに取り組まない原因でもあります。
AC傾向をもつ多くの人が孤立を抱えている理由は「人から傷つけられないため」です。
これは養育者との関係から受け取ったものです。
しかしながら「二度と傷つけられてたまるか!」と思って孤立という壁を周囲に張り巡らしていることが自分自身を傷つける原因となり、さらに回復する際の障害になっています。
回復の軌道に乗ると徐々に孤立が解消していきます。
しかし孤立を乗り越えてプログラムに取り組まない限り回復の軌道に乗ることはできません。
まさにこれは「卵が先か、鶏が先か」問題と同じです。
だから私たちは本質的な孤立の問題の解決は霊的に目覚めたあとで起きることだとしても、ある程度は回復の軌道に乗るために孤立を軽減する必要があります。
自己受容が孤立のある程度の軽減に繋がる
AC傾向のある人は「子供時代のあの場面でああしておけばよかった、こうしておけばよかった」と自分自身を苛(さいな)んでいるものです。
これが無意識に行われているのでたちが悪いのです。
解決法は意識的・自覚的に「子ども時代に起きたことは仕方のないことだったのだ」と自分自身を100%無罪放免することです。
自分自身を苛(さいな)む記憶が浮かび上がるたびに否認しないで100%赦し続けます。
これを生涯を通してやり続けます。
人生のどこかで「100%赦しました。もう過去の記憶は浮かび上がってこなくなります」ということは決してありません。
ですから人生の最後の日まで「自分自身を赦し続ける営み」を止めないと覚悟を決めて決心し実践します。
ありのパパも18年間棚卸しを先延ばしにしました。
しかし先延ばししたことへの結論は「仕方ないね。そういうこともある」です。
ありのパパも自分の人生をまるごとそのまま受け入れます。
そして仲間には「オレみたいになりたくなかったら棚卸しをするんだ〜」と涼しい顔で脅かしています(笑)。
3.孤立の本質的な解決は12ステップの取り組みによる
子ども時代の自分をゆるすことが孤立をある程度軽減する方法であると書きましたが、しかしこれは12ステップに取り組むための応急処置に過ぎません。
孤立を解消する本質的な解決策は12ステップによるしかありません。
①霊的目覚めによって暗闇の中にいる孤立を真っ昼間の中に引きずり出す
霊的目覚めとは宗教経験ではなく、自分が嗜癖に陥った原因をまるで映画でも見るように鮮やかに理解することです。
「なぁ〜んだ。そういうことか!」みたいな感じです。
なぜ孤立するかと言えばそれは人が怖いからです。
人が怖いので不正直や身勝手という手段が孤立の投影として現れてくるのです。
このカラクリをはっきりと見破ることができれば「もうその手は二度と桑名(くわな)の焼き蛤(はまぐり)」とばかりに新しい行動パターンを使うことが出来るようになります。
そういう訳で本質的な解決策は霊的に目覚めることです。
②感情から入る「日々の棚卸し」が自分育ての道具
もう一つの解決策は日々の棚卸しです。
霊的目覚めが転機的経験であるのに対して、日々の棚卸しは継続的・漸進的(ぜんしんてき)経験です。
人はすぐには変わらないというのは真実です。
「行動の仕方」は条件さえ揃えば即座に変わることができますが、「考え方」と「感じ方」は「行動の仕方」を変え続けることによって徐々に変わっていきます。
そのために必要なのが日々の棚卸しです。
大切なことは「また感情が暴走した」とか思わずに「感情さん。本能が傷ついたことを教えてくれてありがとう!」と感謝することです。
感情が暴走するたびに「また面倒を起こしやがって!」と受けとめるなら、それは自分自身を苛(さいな)んでいるのと同じです。
このような日々の棚卸しを何回やっても意味がないどころか却って有害です。
しかし正しく「教えてくれてありがとう!」と受け止めつつ、日々の棚卸しをし続けるなら、孤立が徐々に薄れていきます。
【まとめ】
孤立は嗜癖に陥る原因であるばかりでなく、回復の妨げにもなります。
孤立があると回復に取り組むことができないからです。
それでプログラムに取り組むためには予め孤立をある程度軽減する必要があります。
それは子ども時代に起きた出来事をまるごと受け入れることによってです。
孤立の解消は12ステップに取り組むことによって実現します。

◎回復と平安と祝福を祈っています。