「12ステップに取り組んでいるが、このプログラムの骨格がよく分からない」という方はおられませんか?
この記事ではプログラムの骨格が「問題」と「解決」と「行動」によって構成されていることを明らかにし、それらを一つ一つ解説しています。
1.【問題】と【解決】と【行動】を正しく捉えたら、依存症・ACは回復できる!
依存症・AC・共依存の【問題】はたった二つだけです。
それは強迫観念と渇望現象です。
強迫観念とは「やったらいけないと分かっているにもかかわらず、それが襲ってくるとコロッと騙されてしまう」ものです。
渇望現象とは強迫観念によっていったんスイッチが入ってしまうと肉体的・精神的・時間的・経済的に限界をむかえるまでやり続けざるを得ない状態になってしまうものです。
私たちが抱える【問題の本質】はたったひとつだけです。
それは私たちが強迫観念と渇望現象に対して無力だということです。
なぜ無力かというと、それは強迫観念と渇望現象は依存症回路から発せられるものですが、この依存症回路が脳の報酬系にできたことが原因です。
報酬系は欲求に対してアクセルを踏む役割を果たし、報酬系の周りに拡がっている前頭葉はブレーキを踏む役割を果たします。
優先順位はいつでも報酬系⇒前頭葉の順番です。
なぜなら欲求が満たされないと生存が確保されないからです。
要するにきれいごとはお腹が一杯になってから考えようというわけです。
この報酬系に依存症回路ができると報酬系は欲求に対してアクセル踏みっぱなしの状態になってしまいます。
そして前頭葉が司る理性の出番はなくなってしまいます。
これが一般的なカウンセリングが依存症からの回復に効果がない真の理由です。
なぜなら一般的なカウンセリングは理性に働きかけて問題を解決しようとするアプローチを取りますが、依存症においては理性は無力化されています。
既に無力化されているものに働きかけても効果があるはずはありません。
以上のことから明らかなことは依存症・AC・共依存は脳の病気だということです。
私たちが無力なのは意志が弱いからでもなく、環境に原因があるわけでもなく、ましてや生育歴に原因があるわけでもないのです。
風邪をひいて自分を責める人はいません。
そんなことをしないでとっとと風邪を治すために栄養のあるものを食べたり、部屋を暖かくして充分な睡眠を取ります。
しかし依存症になった人で自分を責めない人は稀です。
「なんで依存症になったのだろうか」というわけです。
これは依存症からの回復において致命的な悪影響があります。
なぜなら回復のためのエネルギーが分散されてしまうからです。
エネルギーを集中させてもやっとこさ回復できるかできないかという線なのに分散させてしまっては回復の見込みはゼロになってしまいます。
2.【解決】は何か?
【問題の本質】が強迫観念と渇望現象に対する無力にあると真に理解できれば自ずと解決も明らかになります。
自分が無力なのですから、当然のこととして解決は「無力な自分以外」の存在ということになります。
12ステップはこの無力な自分以外の存在を「自分を超えた大きな力」「自分なりに理解した神」と呼びます。
もし12ステップがここで終わるとしたら、このプログラムは宗教的プログラムということになります。
しかし12ステップは霊的(スピリチュアル)なプログラムです。
「宗教的」に対して「霊的」とは回復するためには行動のプログラムに取り組む必要があるということです。
この行動のプログラムに取り組むことによって回復することを解決策と呼びます。
これを12ステップでは「問題が二つあるように解決策も二つある」と言います。
解決策は「共同体から受ける助けと支え」と「霊的目覚め」です。
本質的な解決策は霊的に目覚めることです。
3.シラフを保つ秘訣は自分の側に問題を発見すること
ステップ4・5の棚卸し作業によって明らかになることは「これまで自分自身を傷つけてきたのは他者であるとばかり思い込んでいたのが、実は自分自身を傷つけていたのは私の性格上の欠点からくる行動パターンだった」ということです。
例えば「ある人に暴言を吐かれて傷ついた」とします。
この理解は一般的な理解の図式です。
しかしこのような理解をしている限り、私たちの人生は傷つき放題ということになってしまいます。
なぜなら病的な人がこの地上からいなくなることは考えにくいからです。
そうしたら解決策は自分の側でなんとかすることです。
たとえばその状況で「アホンダラ、何いうとんじゃこら。ボケ!」と言い返すことができていたら、あなたは果たして傷ついていたでしょうか?
もちろん別の心配が発生しているかもしれませんが、少なくとも「言い返してやったよ!」と感じて清々したのではないでしょうか(笑)。
そしてもう一つ大切なことがあります。
それは相手のことを「暴言を吐く病的な性格の持ち主」と心底思っていたら「かわいそうに」と感じることはあっても決して自分自身が傷つくことはないということです。
実は心のどこかで「あの人が言っていることは図星かもしれない」と思っているからこそ、あなたは傷ついてしまったのです。
このような考え方ができるようになるためにステップ4・5の棚卸し作業をやり、さらにステップ10の日々の棚卸しを生涯を通してやっていきます。
日々の棚卸しをやっている限り、いったん傷ついても棚卸し作業の結果、自分のことを笑えるようになります。
このようにして本能が傷つかなくなると感情の暴走は止みます。
不快感情がなくなれば嗜癖を使う必要もなくなります。
そして不快感情がない心は静けさで満たされます。
【問題】と【解決】と【行動】を正しく捉えたら、依存症・アダルトチルドレン・共依存症は回復できます。
◎回復と平安と祝福を祈っています。