いざ棚卸しをやろうとして様々なやり方があって戸惑っておられる方はいませんか?
この記事ではACと標準的な棚卸しのやり方を取り上げ、それぞれのメリットとデメリットを解説しています。
1.ACの棚卸しと標準的なAAの棚卸しのやり方の違い
RD(リカバリーダイナミクス)を始めとした標準的な棚卸し表の書き方は、恨み・恐れ・性の領域で迷惑を掛けたこと・その他で迷惑を掛けたことの四つの領域に分けて行います。
これに対して「ACのための12のステップ」という書籍に書かれている方法は「ACの問題」ごとに棚卸し表を書くというやり方です。
たとえば一番始めに来るのが「抑圧された怒り」です。
そして孤立・世話焼き・行き過ぎた責任感などが続きます。

2.ACの棚卸し表の書き方のメリット
棚卸し表の書き方には「このやり方でなければならない」というのはありません。
自助グループごとに伝統的なやり方があります。
それぞれにメリットとデメリットがあります。
①嗜癖対象がより一層明らかになる
最も大きなメリットは自分が何に嗜癖しているのか明確になるということです。
アダルトチルドレンは「自分自身は回復しなければならない」と強く思っています。
だからこそ自助グループに参加するわけです。
しかし「あなたは何に嗜癖していますか?」という質問に答えることが出来ない人が多いです。
アルコール依存症者や薬物依存症者なら、この質問に明確に答えることが出来るでしょう。
なぜなら誰が見ても嗜癖対象は明らかだし、口ごもったりすると他の仲間に「否認だな」と思われてしまいます。
これに対してアダルトチルドレンで自分が何に嗜癖しているかを明確に自覚している人は少ないのではないでしょうか?
ミーティングでは子供時代の虐待や養育放棄を語りますが、しかしそれは子供時代に起きたことであって現在の生きづらさの遠因ではあっても直接的な原因ではありません。
直接的な原因は病的な人間関係を嗜癖として使っていることです。
②私たちは人が怖いので、人々から孤立することを嗜癖として使っている
孤立を嗜癖として使うことが「ACの問題」の一番目に書かれてあります。
私たちは自分が周囲から孤立するのはてっきり親のせいだとばかり思っていました。
しかし正直な心になって自分の振る舞いを観察してみると、どうやら自分は孤立することを嗜癖として使っているようだということに気付かされます。
③私たちは自分が何者か分からず、他からの承認を病的に求めることを嗜癖として使う
ACは一般的にいって仕事に熱心です。
しかしこれは裏を返せば強迫的に取り組んでいるということでもあります。
その遠因は子供時代に充分な承認を与えられなかったからですが、今現在ACが承認を求めるのは嗜癖として使っているからです。
自助グループの運営などでトラブルが起きる原因も病的な承認欲求が隠れた原因である場合があります。
「自分はこんなに熱心にやっているのに他の仲間はなぜそれを認めようとしないのか!?」というのは典型的な病的な承認欲求によるものです。
3.ACの棚卸し表の書き方のデメリット
①自覚のない場合
そもそも「ACの問題を私は嗜癖として使っている」という自覚がなければ「蛙の面に水」であり、棚卸し作業による激的な変化が期待できなくなってしまう恐れがあります。
そのような場合はむしろ標準的な棚卸しのやり方のほうが効果を期待できます。
②被害者意識を疾病利得(しっぺいりとく)として使っている場合
疾病利得とはその病気であることで特定の利益を得ていることを言います。
ACには特にこの傾向が強いように思います。
ACの棚卸しのやり方は、この疾病利得を一枚一枚引っ剥がしていく作業ですから、人によっては強烈な痛みを感じる可能性があります。
でもそのようなときでも「私には出来ない(ステップ1)。しかし神には何でも出来るからである(ステップ2)。よ〜し、取り組むぞ!(ステップ3)」と1から3のステップを踏みつつ、棚卸し作業にチャレンジすることが可能です。
③嗜癖を使わない方法は不快感情を取り除くこと
嗜癖を使わないための方法は不快感情を取り除くことです。
だからこそ標準な棚卸しのやり方では不快感情ごとの棚卸しをやるわけです。
そのような作業を行うことによって初めて「私は自分の不快感情に気づいてなかった」とか「私は自分自身の不快感情にむとんちゃくだった」という気づきを得ることができます。
それに対して嗜癖行為ごとに棚卸し作業をやると、自分が使っている嗜癖はより一層明らになりますが、「どの不快感情が暴走したのか?」「どの本能が傷ついたのか?」「どの性格上の欠点が原因だったのか?」への焦点の当て方が弱くなる危険があります。
しかしステップ5を導くスポンサーやシェアリング・パートナーが上記の点に注意をしながら棚卸し作業をやるなら、これらの危険から免れることが可能です。
ではありのパパは「どの方法が良いと考えているのか?」ということですが、私自身はACだけが問題の場合はACのやり方でもよいが、複数の嗜癖を抱えている場合は標準的なやり方のほうが良いと考えています。
理由は複数の嗜癖をもつ人が独自性の強いやり方を使うと、他の嗜癖からの回復に取り組む時に初めからやり直さなければならなくなってしまうからです。
標準なやり方をマスターすれば、次から次へとそれぞれの嗜癖に適用することが出来ます。
このようなわけでありのパパがシェアリング・パートナーをやらせていただくときは標準的なやり方に限らせていただいています。
これは標準的なやり方しかやったことがないというのもあります。
自分がやったことのないものを人様に教えることは出来ないからです。
◎回復と平安と祝福を祈っています。

