棚卸し作業は自分の罪を懺悔(ざんげ)することではありません。
間違った思い込みのため棚卸し作業に尻込みする多くの仲間を知っています。
この記事では棚卸し作業の目的を明らかにします。
1.アダルトチルドレンが棚卸しに取り組むために舞台用の仮面を取り除く
「ACのための12ステップ」には「他の一人の人に対して自分自身を明らかにすることは、………舞台用の仮面を取り除くためにやらなければならない」(89頁9行目)ことと書かれてあります。
多くのACにとって自分の本心を他の人に話すなどは人生で初めての経験である場合が多いのではないでしょうか。
それでおっかなびっくりシェアリング・パートナーに自分の話を始めます。(シェアリング・パートナーとはステップ5の文言に出てくる「もう一人の人」の役だけを専門にやる人のことをいいます。全部やる人のことをスポンサーと呼びます)
「そんな人だと思わなかった!」という反応が返ってくるのを覚悟するのですが、だいたいは肩すかしで終わります。
「それが何?」っていう感じです。
それで「他の人にとっては自分の秘密なんかは秘密でも何でもないんだ」ということを自覚します。
なぜ仮面を取り除く必要があるのでしょうか?
二つあります。
一つは仮面を取らないと意味のある棚卸しが出来ないからです。
表面をなでるだけのような棚卸しは出来るかもしれませんが、それが棚卸しと言えるかは疑問ですし、何よりそれでは人生が変わりません。
もう一つは仮面をつけて人生を生きてきたという事実そのものが、人生が思い通りに生きていけなくなった理由だからです。
ACだけでなく日本人の多くは建前で生きていきます。
一言で言えばそれが日本という社会であり、文化です。
しかし建前で生きることはACにとって自殺行為です。
なぜなら自分の本心が言えないことで本能が傷つき、本能が傷つくことで感情が暴走し、不快感情が生まれるからです。
ACをはじめとした依存症者は不快感情から逃れるために嗜癖を使う人々です。
嗜癖によって物質依存、行為依存、行動障害(ある特定の振る舞いへの依存)と分かれますが、一つはっきりしているのはどの依存であっても嗜癖を使い続けると人生を棒に振るということです。
だからACには不正直な対応をする自由はないと考えなくてはいけません。
いいではないですか、半強制的に正直に生きることが出来て(笑)。
ありのパパはよく思うのです。アダルトチルドレンや依存症にならなければ決して正直な生き方を選び取ることはなかっただろうと。
2.棚卸しの真の目的は自分の欠点の正確な本質を認めること
アダルトチルドレンが棚卸しを恐れる理由の一つは間違った思い込みにあります。
それは洗いざらいぶちまけなくてはならないという思い込みです。
事実は「あのね~、そんなことされたらシェアリング・パートナーが迷惑だから!」という感じです。
誰も求めていないことを求められていると勘違いして自分の回復を先延ばしするという愚かさを犯してはなりません。
棚卸しの真の目的は自分の欠点の正確な本質を認めることです。
欠点の正確な本質を知るとは「自分はある特定の状況で必ず同じような対応を繰り返している」ことを具体的に把握することです。
これを古い行動パターンを知るといいます。
棚卸し作業は自白することでも懺悔することでもありません。
棚卸し作業の真の目的は自分の古い行動パターンを知ることです。
3.真の自己認識を発展させていくために必要なこと
「あなたはどんな人ですか?」と聞かれて本心では「真面目で誠実で一生懸命に生きてきました」と答えたいのを抑えて、「とても足らないところが多い者でした」と答えていたのはどこの誰でしょう。(それは私です)
真の自己認識を発展させるためには良いところと好ましくない性質の両方を理解することがスタートになります。
伝統的な棚卸しは好ましくない性質だけを取り上げます。
しかしこのやり方だと新しい行動パターンを見つけ出す作業に支障を来します。
なぜなら自分の中に良いものを一つも見いだせない人がどうして新しい行動パターンを実践できるでしょうか?
そんなことは出来ることではありません。
棚卸しの真の目的は古い行動パターンを特定し、その対極にある新しい行動パターンを考え出すことです。
だから「私には良いところなど一つもありません」などと寝言を言っている場合ではないのです。
とても大切なことは「私が私の人生の主役である。私が自分の人生を大事に思わないで一体誰がそう思ってくれるというのか!」との考えにしっかり立って棚卸し作業に突入することです。
◎回復と平安を祈っています。