依存症回復のためには信仰を働かせる必要があります。
この記事では信仰を働かせるとは三つの作業に全力で当たることであるのを明らかにし、その三つについて具体的に解説しています。
目次
1.依存症の回復のためには信仰を働かす必要がある
EAの12ステップ本である「How It Works EAの12ステップ」には「私たちは単に多くの信仰を望んでいるわけではない。私たちの信仰を発展させるためにはそれを使わなくてはならない」(16頁下から7行目)と書かれてあります。
ステップ2で清水の舞台から飛び降りるような大決断をして神を信じたとしても、信仰を働かせないなら何の意味もありません。
依然として私たちを取り巻く状況は改善されず、嘆息とうめきがあるのみです。
だから問題の核心は信仰を持つことではなく、信仰を活用することにあります。
もちろん信仰を活用するためにはそもそも信仰をもっていなければなりませんが。
この記事を読んでおられる方の中で「そうは言っても神を信じていれば、それはそれで何とかなるのではないか?」と考えておられる方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方のためにありのパパの体験談をお話します。
ありのパパは18歳のときに信仰を持ち、58歳の時に徹底して12ステッププログラムに取り組みました。
その40年の間、徹底して信仰に取り組みました。
自分で言うのもなんですが、火のような信仰をもって人生を生きてきました。
しかし現実の問題としては嗜癖から解放されることがありませんでした。
これはキリスト教の視点から言うと様々な解釈が可能です。
いわく「人間は罪人だから仕方ない」とか「人は弱い存在であるから間違いを犯すこともある」などです。
これはある程度正しい理解なのですが、致命的な誤りを含んでいます。
それはシラフの生活(キリスト教で言うところの聖い生活)は人間が生きていく上での絶対条件だということです。
要するにシラフの生活(聖い生活)を積み重ねていかないと人生が台無(だいな)しになるのです。
ありのパパの心からの叫びは「信仰を働かせる気は満々だが、どのように信仰を働かせればよいかが分からない。誰か教えてください!」というものでした。
その祈りは40年目にかなえられることになります。
2.信仰を働かせるとはどういうことか?
信仰を働かせるとは三つの作業に全力で取り組むことを指しています。
①棚卸し作業に取り組む
棚卸し作業は新しい人生の軸になるものです。
また自動車のプラグのような働きをします。
ブラグは小さな部品ですが、火花を散らすことによって自動車全体を動かす力を持ちます。
同様に棚卸し作業で得た気づきが私たちの人生全体を動かす力を持ちます。
気づきがなければ12ステップを学んでも、ミーティングに参加してもうすらぼんやりして何がなんだかはっきりと分かりません。
しかし一旦気づきが与えられると「そうか!わかったぞ!これはこういうことだったんだ!」と一気に理解力が増し加わり、新しい人生を生きていく鍵となります。
棚卸し作業は我力(がりき)ではできません。
なぜならそれは私たちの前に立ちはだかっており、とても乗り越えることができると思えないからです。
だからこそ「私には棚卸し作業に取り組むことができない。しかし神にはどんなことでもできるからである」と認め、信じ、取り組む決心をするのです。
人生で一度限りのステップ4・5の棚卸し作業が終わると、ステップ10の日々の棚卸しが待ち受けています。
これも「私にはできない。しかし神にどんなことでもできるからである」と日々取り組みます。
これを「信仰を働かせる」と言います。
②新しい行動パターンを使って生きていく決心と実践
棚卸しの結果、自分自身を傷つけていたのは他者ではなく、自分の性格上の欠点からくる行動パターンであったことが明らかになります。
それで使い馴れた古い手を使わず、古い行動パターンと対極にある新しい行動パターンを使って生きていく決心と実践を行います。
この新しい行動パターンを使えば使うほど人生は新しくなります。
これは「言うは易し、行うは難し」です。
信仰を働かせることなしには決してできないことです。
「神様、私には古い行動パターンを使わないこともできないし、新しい行動パターンを使うこともできません」と無力を認め、「しかし神様になら私に知恵を与え、実践する力をお与えになることができると信じます」と神が私を健康な心に戻してくれると信じます。
これが「信仰を働かせる」ことです。
③これからの人生を埋め合わせの人生として生きていく決心と実践
考えようによっては埋め合わせ作業が一番困難かもしれません。
ありのパパは信仰に入った時、うどん屋さんに無銭飲食をしていたことをお詫びに行き、お代を支払ったことがありました。
その時、うどん屋さんの前を行ったり来たりしたのですが、「今お詫びに行かないと永遠に苦しみ続ける」と思った瞬間に神が私の肩に手を当ててくださったのを感じました。
それで神に背中を押されるようにしてお詫びとお支払いを行うことができました。
その後、家に帰ってくると爆発的な喜びが押し寄せてきました。
文字通り、罪悪感と後悔が一掃されました。
どうぞ、信仰を働かせてください。
「私には埋め合わせ作業はできない。しかし神にはどんなことでもできるからである」と信じ、埋め合わせ作業に取り組んでください。
3.信仰を働かせないと、不快感情から逃れるために嗜癖を使い続けるほかはない
棚卸し作業の結果、四つある不快感情のうちの恨みと恐れは根拠のないものであることが分かって消えてなくなりました。
残りの罪悪感と後悔は埋め合わせ作業によって消失します。
こうして私たちは不快感情なしに人生を生きていくことが可能になります。
本当の生地獄は不快感情を持ちながら地上生涯を生きることです。
反対に地上天国とは不快感情なしに自分の人生を生きることです。
EAの12ステップには「もし恐怖と不安の中にとどまり続けるなら、信仰などないことを証明することになる」(16頁下から6行目)とあります。
恐怖と不安とは不快感情のうちの恐れの感情にほかなりません。
恐れの感情を暴走させたままで嗜癖から逃れるのは決してできない相談です。
どうぞ、小さな信仰を働かせてください。
信仰を三つの作業を行う知恵と力となさいますように。
◎回復と平安を祈っています。