恐れには性格上の欠点としての恐れと、不快感情の恐れがあります。
この記事では二種類の恐れについて明らかにし、どうしたら恐れから解放されることができるかについて解説しています。
1.内なる恐れは隠されている
私たちの中には恐れがあります。
恐れをもっていない人はいません。
そしてアダルトチルドレンや共依存症を含めた依存症になる人は恐れを強くもっているのが通常です。
しかし「私の中には恐れが強くあります」と自覚している人はあまりいません。
なぜなら自分の中に恐れがあることを否認しているからです。
私たちは二重の否認を使っています。
①一つ目の否認は性格上の欠点の恐れ
性格上の欠点は利己的・不正直・恐れ・配慮の欠如の四つです。
この中で動機となるのが利己的と恐れです。
あとの不正直と配慮の欠如は行動となって現れるものです。
たとえば恐れが動機の場合は不正直行動が外側に現れます。
人が怖いので、自分の本心と異なることを言ったり行動したりします。
利己的な動機の場合は配慮の不足となって行動に現れます。
なぜなら自分のことしか考えていないときは相手に配慮することは決してできないからです。
時々「いいえ、私はできる限り配慮しています!」と言われる方がおられます。
でもね、それはおかしな話です。
なぜなら十分な配慮などというものはこの地上に存在しないからです。
こちらの側でどんなに配慮したつもりでも、相手には配慮が不足していると感じることが多いのです。
そのような場合に利己的な動機で生きている人は不満を感じたり、自己憐憫になったりします。
「こんなに一生懸命やっているのに分かってくれない。こんな私はなんと可愛そうなんだろう」というわけです。
しかしこの地上には十分な配慮など存在しないと分かっており、利己的な動機に支配されていなければ、「ではもっと配慮を充実させよう!」と考えることができます。
「そんなこと思えません!」ですって?
そうするとあなたは利己的ということになります(笑)。
②二つ目の否認は不快感情の恐れ
不快感情とは本能が傷ついたことを私たちに知らせてくれる役目を持つものです。
例えば、周りとうまくやっていきたいと願うのは共存本能ですが、これが傷つくと「俺って、私ってだめなやつだな」と感じるので自尊心が傷つきます。
当然のことながら対人関係も傷つきます。
安心・安全の環境を保持したいと願うのは安全本能です。
安全本能は物質面での安全と感情面での安全があります。
物質面での安全とは身体的・経済的安全を指します。
感情面での安全は心理的・精神的安全を指します。
人間関係のトラブルが起きると感情面での安全が傷つきます。
共存本能が傷つくと「よくも傷つけてくれたな!」というわけで恨みの感情が暴走します。(それ以外の感情が暴走する場合もあります)
安全本能が傷つくと当然のこととして恐れの感情が暴走します。(これも他の感情が暴走する場合もあります)
多くの場合に私たちは感情が暴走したらどのように対処すればよいかを知らないので、無意識のうちに感情の否認ということを行います。
要するに何も感じないふりをするのです。
「別に」とか「私はいいけど」というセリフが出てくる場合には感情を否認していることが多いようです。
③日々の棚卸しによらなければ気づけない
自分の病的な行動パターンに気づくためにはステップ4・5の棚卸し作業が最も有効です。
ありのパパは他のカウンセリングにも何十年も携わってきましたが、12ステップ以上に効果のあるものを知りません。
しかし有害な行動パターンが出てくる根っこの部分である恐れについてはステップ10の日々の棚卸しを継続的に行っていく必要があります。
それぐらい恐れの問題は根深いということです。
2.日々の棚卸しの具体的なやり方
①どの感情が暴走したのか?
恨み・罪悪感・恐れ・後悔のうちのどの感情が暴走したかを見ていきます。
十把一絡(じっぱひとから)げに「あぁ〜もぅ〜、どの感情が暴走したんだよ。けっ!」というような態度ではなく、「本能が傷ついたことを教えてくれてありがとう。さて、どの感情が暴走したのか一つ一つ見ていこう!」という態度が大切です。
これをやっていくと「私は恨んでなんかいません!」という頑固な否認も少しずつ解除されていきます。
②どの本能が傷ついたのか?
暴走した感情を特定できたら、今度はどの本能が傷ついたのかを見ていきます。
本能には共存本能(自尊心&対人関係)・安全本能(物質面&感情面)・性本能(秘密の性関係&公認の性関係)・将来野心がありますから、これも丁寧にひとつひとつ見ていきます。
日々の棚卸しが適切に行われていればここらへんで心理的変化が起き始めます。
「あぁ、そうか。私はこういう理由で傷ついていたのか!」という具合です。
③自分の側の過ちの正確な本質は何か?
性格上の欠点には利己的・不正直・恐れ・配慮の欠如がありますから、これも丁寧に一つ一つチェックしていきます。
そうすると必ず腑に落ちることがあります。
「なぁ〜んだ。今回も私の側に問題があったのか!」というわけです。
この気付きが重要です。
なぜならこの気付きが「他人は私自身を傷つけることができない。私自身を傷つけているのはいつだって私の性格上の欠点からくる行動パターンなのだ」という理解をもたらすからです。
今までは「周りは敵だらけ」と思っていたのが、この気付きを持ち始めると「ひょっとして周りは私の仲間かもしれない」と感じ始めるようになります。
これが共同体意識とか共同体感覚と呼ばれるものです。
これを持ち始めるとそれまではギスギス・トゲトゲしていたのが、周りの人から「穏やかになったね」と言われるようになり、『平和の人』として人生を生きることができるようになります。
④祈りと黙想を行ったか?
日々の棚卸しをやった結果、自分の側に落ち度がないという場合もたまにはあります。
そのような時には相手の方を祈りと黙想を通して神に委ねます。
⑤埋め合わせできることはあるか?
具体的に迷惑をかけた場合には具体的な埋め合わせが必要です。
そしてそのような時には埋め合わせすることによって更に相手を傷つけることがないようにする必要もあります。
3.内なる恐れに打ち勝つ唯一の道
12ステップ本の多くには「恐れは速やかに消え去る」などと書かれているものが多いです。
これを読んで途方に暮れる方も多いのではないでしょうか?
「自分は教科書どおりではない。どこかに間違いがあるのだろうか?」という感じです。
実はありのパパがそうでした。
恐れに打ち勝つための方法は恐れと正面対決しないことです。
側面から回り込んだり、背後から襲ったりと、考えようによっては卑怯な手を使うことです(笑)。
もし恐れに正面からぶつかって勝つことができるなら、私たちは無力ではないということにならないでしょうか?
もちろん私たちが無力なのは嗜癖に対してなのであり、性格上の欠点ではないという見方もできます。
しかし嗜癖に対して無力なら、嗜癖の原因になっている性格上の欠点に対しても無力であると考えるのが妥当ではないでしょうか?
私たちは嗜癖に対して無力を認めた時、どのような対応をしたでしょうか?
そうです。自分を超えた大きな力が私を健康な心に戻してくれると信じるようになりました。
では性格上の欠点に対して無力を認めたら、どのような対応をしたらよいでしょうか?
そうです。新しい行動パターンを全力で実践することによって古い行動パターンが出てくる出番をなくすことです。
これを古い行動パターンを上書きすると言います
古い行動パターンとは一見関係がないような行動パターンを全力で実践することによって古い行動パターンである恐れの出番をなくします。
そうすると不正直行動はなくなり、その結果として本能は傷つかなくなり、感情の暴走も止まります。
感情の暴走が止まった心は平安が満ちるようになります。
「ステップ9の約束」と言われる『心の平安』が実現するのです。

◎回復と平安を祈っています。