アダルトチルドレンの問題リストの10番目には「私たちの子ども時代は悪夢のようであり、生き延びるすべとして自分の感情を心の奥底に閉じ込めた。そのため大人になった今でも自分が何を感じているのかわからない」とあります。
私たちが自分の感情を閉じ込めた理由は何であり、そこから回復していくためにはどうしたら良いのでしょうか?
1.感情が凍りついた原因は何か?
感情表出の機会が乏しかったので感情を否認するようになったのではありません。
真の理由は感情が暴走したからです。
ここで言う感情とは不快感情を指しています。
不快感情には4つあり、恨み・罪悪感・恐れ・後悔です。
子ども時代の私たちには感情の暴走を止める方法が分かりませんでした。
それで手っ取り早く、自分にも可能な方法を選択するほかはありませんでした。
それが感情を抑圧・否認するということだったのです。
大人になった今でも感情を抑圧・否認するアダルトチルドレンはそれを無自覚に続けているという面もあります。
しかしもっと本質的な問題は大人になった現在でも依然として感情が暴走せざるを得ないような行動パターンを使っているというところにあります。
だから大人になっても感情を抑圧・否認する必要があるのです。
2.感情を凍りつかせることからの本質的な解決策
感情を抑圧し続けるとどんなことが起きるかは皆さんもよくご存知でしょう。
様々な精神的・肉体的疾患に罹患するリスクが飛躍的に増大します。
ですから大人になった今は別の解決策を見つけ出さなくてはいけません。
それが行動パターンを変えることです。
行動パターンを変えれば本能が傷つくことはなくなり、その結果として感情が暴走することはなくなります。
そうしたら感情の抑圧・否認をする必要はなくなります。
これを霊的に目覚めると言います。
3.もう一つの解決策
否認する必要がなくなったら否認は自然に解けるでしょうか?
いいえ、アダルトチルドレンは「感情の否認」を嗜癖行為として使ってきましたから、脳の報酬系に依存症回路ができています。
依存症回路はいったんできればなくなることはないと言われています。
ですから感情の否認という嗜癖を使うように強迫観念が繰り返し襲ってきます。
ではどうしたらそれに打ち勝つことができるでしょうか?
それはミーティングに参加して仲間の分かち合いに耳を傾けることです。
あるときに仲間が「若い時に親を殺しておけばよかった」と言いました。
それを聞いたときは何とも思わなかったのですが、家に戻ってきて日常生活を行っている時に良心の声が聞こえてきました。
それは「あのミーティング会場の中で親を殺してやりたいと思っている人がもう一人いたよ」
私が「それは誰?」と尋ねると、良心の声は「それはあなたです」と答えました。
その時初めて自分が親を殺してやりたいと思っていたということに気づきました。
それまでは記憶や感情を抑圧・否認していたのが、仲間の分かち合いを聴くことによって抑圧・否認が解除されたのでした。
またある仲間が茶話会で12ステッププログラムに取組まない人を自分は仲間だとは思わないと言いました。
聞いたときは「へ〜、そんな考え方もあるんだ」ぐらいにしか思わなかったのですが、これも日常生活に戻ってから自分もまた12ステッププログラムに取り組まない人を仲間だとは思っていないことに気付かされました。
それまでは「そんなひどいことを考えたらいけない」と思い、その考えを抑圧・否認していたのでした。
しかし仲間の分かち合いを聴くことによって、抑圧・否認が解除されたのでした。
ACはこのようにして一生の間、ミーティングに参加して自分の否認している記憶や感情を思い出す作業を行います。
思い出せば思い出すほど、否認を解除すればするほど、心が平安に満たされ生きるのが楽になります。

4.続けるステップ
ステップの12の最後の部分は「私たちはすべてのことにこの原理を実行しようと努力した」とあります。
これは「私たちの中に残っている未解決の問題を12ステップの原理を応用することによって解決しようと今日一日努力した」ということです。
これはアダルトチルドレンにはとっては統合作業を行うことを意味しています。
統合作業とはアダルトチルドレンの問題リストに書かれてある13の特徴を祈りと黙想の時間に取り扱うことです。
これも一生涯続ける作業です。
アダルトチルドレンがなぜこれを行う必要があるかと言うと、アルコール依存なら「飲まない」というただ一点だけを気にしていればよいのですが、アダルトチルドレンの嗜癖行為は13個あります。
それがアダルトチルドレンの問題リストと呼ばれるものに書かれてある内容です。
そしてそこに書かれてある内容は物質依存ではなく行為依存であり、行為依存の中でも人間関係への様々な形の依存なのです。
だからこそアダルトチルドレンはそれら一つ一つを注意深く取り扱っていく必要があります。
分かったふり、治ったふり、回復したふりをしてはならないのです。
これらの作業はやったらやっただけ、人格が作り変えられ、人間関係が改善され、結果として人生がどんどん良くなるステップです。

◎回復と平安を祈っています。