多くの方が怒りの感情をコントロールしようとして難儀しておられます。
しかし怒りの感情をコントロールすることは土台無理な話なのです。
でもご安心ください。
出てきた怒りはなんともしようがありませんが、怒りそのものを出てこないようにする合理的な方法があります。
ありのパパの個人的体験を例にしながらご説明します。
1.性格上の欠点からくる行動パターンが感情の暴走を引き起こす原因
性格上の欠点には利己的振る舞いが動機となって配慮が不足するという行動パターンがあります。
利己的振る舞いとは具体的にいうと「すべての人は私の考えたとおりに行動して当然である」という間違った思い込みです。
それを如実に味わった体験をありのパパは最近しました。
精神病院に入院している二人の姉に面会に行ったときのことです。
二種類の弁当を用意し「どちらがいい?」と尋ねたところ、姉はどちらの弁当でもなく、横に置いてあったおかずのハンバーグを指差して「これがいい」と答えました。
その時私は内心ムカ〜ッとしました。
大声を出さずとも自分の中で怒りが爆発したのが分かりました。
なぜ怒りが爆発したのか『日々の棚卸し』をしました。
その結果、明らかになったことは「二種類も弁当を用意してやったのだから、あなたはこの中から選んで当然である」という誤った思い込みでした。
私は「すべての人は私が期待したとおりに動いて当然である」という間違った思い込みを持っており、用意した弁当の中から選ばなかったということで私の共存本能の自尊心が傷つきました。
それは「私が二種類もの弁当を用意してやったのにお前はそれを選ばなかった」と感じ、そのような振る舞いをされる自分は価値のない人間だと受け止め、その結果として自尊心が傷ついたのでした。
本能が傷ついた結果、恨みの感情が暴走しました。
その恨みの感情の暴走が怒りの爆発というお定まりの嗜癖行為に走らせたのでした。
私の怒りが(内心で)爆発したのは姉の振るまいが原因だったのではなく、自分自身の性格上の欠点からくる行動パターンが真の原因でした。
2.問題の原因が明らかになれば、解決策も自ずと明らかになる
解決策は「すべての人に敬意を持って接することに全力を尽くす」ことです。
ではこの場合、何が具体的な解決策になるでしょうか?
それは二種類で足りなかったのなら、今度から三種類用意すればよいのです。
何だったら四・五種類用意すればよいのです。
これが配慮の不足に換えて配慮を充実させるということです。
相手の振る舞いに原因を求めている限り、自分自身の問題行動がやむことはありません。
それがいやなら私たちはどうしても自分自身の性格上の欠点からくる行動パターンを変える必要があります。
行動パターンを変えることができれば本能は傷つかなくなります。
本能が傷つかなければ感情は暴走しません。
感情が暴走しなければ不快感情から逃れようとして嗜癖に走るというお定まりの行動も止みます。
これが依存症の唯一の解決策であり、12ステッププログラムが提供する本質的な解決策である霊的目覚めの内容です。
3.回復はしても治ったわけではない
12ステッププログラムに取り組んだ結果、霊的に目覚めるとEA(感情と情緒に問題を感じる人々の自助グループ)のミーティングハンドブックの『約束されたこと』がことごとく自分の中に実現します。
しかし同時に依存症回路が脳の報酬系にできると死ぬまでなくなることはないと言われています。
それで条件さえ揃えばいつでもスリップ可能です。
ジョー・マキューが言ったように霊的に目覚めると私たちはあたかも地上天国を歩んでいるような感じを持ちますが、同時に地獄も口を開けて待っているのです。
これに対する対処策は二つあります。
一つは脇を甘くしないということです。
自分の置かれた現実(回復はしていても治ったわけではないという事実)を忘れて治ったつもりになっているとスッテンコロリとスリップしてしまいます。
もう一つは失敗したときに(感情が動いたときに)必ず日々の棚卸しをやることです。
自助グループの参加者の中には「降ろさせてもらう」と言ってミーティングで自分の失敗談を語る方がいます。
しかしありのパパはその話を聞きながら心の中で「それは日々の棚卸しの対象ではないだろうか?」と思うのです。
ミーティングで降ろすのは文字通り自分の荷物を自分以外の人に聞いてもらうことによって自分から剥(は)がしているだけです。
しかし日々の棚卸しで卸(おろ)せば問題の所在が明らかになり、自分自身がさらに成長していくためにはどの部分を変えていけばよいのかを明らかにすることができます。
まさに日々の棚卸しは私たちが永続的に回復の道を歩んでいくために必須のものです。
◎回復と平安を祈っています。