多くのアダルトチルドレンが回復しようとしますが、はかばかしくありません。
なぜでしょうか?
それは問題の原因を見誤っているからです。
多くのアダルトチルドレンが自分がこうなったのは親のせいだと思っています。
しかしそれは確かに原因の一つではありますが、最も大きな問題は別にあります。
アダルトチルドレンの回復に親は何の関係もありません。
この問題を考えます。
1.アダルトチルドレンの回復に親は関係ない
アダルトチルドレンの回復に親は関係ありません。
なぜならアダルトチルドレンも依存症の一つだからです。
依存症であるならば解決策は二つしかありません。
一つは共同体から受ける助けと支えであり、もう一つの本質的な解決策は霊的に目覚めることです。
依存症ならば霊的に目覚めることで回復できます。
霊的に目覚めるとは「回復するのに充分な人格の変化」であるとビッグブックには書かれてあります。
「ACのための12ステップ」には「考え方や感じ方や行動の仕方」(44頁)が変わることと書かれてあります。
霊的に目覚めるとは要するに行動パターンが変わることであり、それだけで回復できるのです。
ここからも回復に親は関係がないことが分かります。
2.問題の原因がわかれば、解決策もおのずと明らかになる
自分自身の性格上の欠点には利己的・不正直・恐れ・配慮の欠如があります。
この4つの短所がアダルトチルドレンごとに異なる行動パターンを生み出します。
ありのパパは恐れが動機となって不正直な行動をします。
ある人は身勝手さが原因で不正直な行動をします。
自分自身の行動パターンが分かれば問題が明らかになります。
問題が明らかになれば、おのずと解決策も明らかになります。
この場合の解決策はすべての人に敬意をもって接することに全力を尽くすことです。
なぜならそうしているときにだけ人への恐れを自分の中から締め出すことができるからです。
人への恐れを締め出すことができれば不正直な対応に陥ることはなくなり、不正直な対応に陥ることがなくなれば本能が傷つくことはなくなります。
本能が傷つくことがなければ感情が暴走することはありません。
感情が暴走しなければ嗜癖行動に走ろうとさせる圧力はなくなります。
こうしてアダルトチルドレンの問題リストに書かれてある13の嗜癖行動から解放されることができます。
もちろんアダルトチルドレンは依存症の一つですから、生きている間は強迫観念と渇望現象が絶えず襲ってきます。
しかし感情の暴走が伴わない状態であれば、強迫観念が教えるウソを容易に見破ることができます。
これが霊的に目覚めるということであり、12ステッププログラムが提供する本質的な解決策です。
3.回復する責任は親にはない。AC本人に責任がある
アダルトチルドレンがよく口にする「親のせいでこうなった」というのは確かに一理あります。
なぜなら性格上の欠点の多くは養育者の刷り込みによるからです。
しかしアダルトチルドレン以外の人にも性格上の欠点はあります。
アダルトチルドレン以外の人々はご自分が生きる過程で短所を作り上げていったのです。
それでアダルトチルドレン以外の人々は短所を取り除くのは自分の責任であると初めから分かっています。
アダルトチルドレンの場合は短所を刷り込まれた原因が親であると明確にわかっているせいかどうか、短所を取り除く責任が自分にあるのをなかなか認めようとしません。
いや表面的には認めるのですが、話しているうちにいつの間にか親の話をし始めます。
こっちは心の中で「親の話なんか聞いてない」と思うのですが、口に出すのが憚(はばか)られるので黙って聞いています。
しかしそんなことをしている間はアダルトチルドレンから回復することはできません。
なぜなら短所を取り除くのは親の責任ではなく自分自身の責任だからです。
霊的に目覚めるだけでアダルトチルドレンは回復することができます。
親は回復のメカニズムの中のどこにも出てきません。
自分自身の回復に専心しようではありませんか!
4.アダルトチルドレンの回復の勘所
①風呂敷を広げすぎない(改善箇所を明確にする)
ACの話を聞いていると「あれもこれも」という場合が多いようです。
もちろんこれはご本人にとっての事実なのですから仕方ないと言えば仕方がないのです。
しかし改善しようとする範囲を一度に広げすぎることは結局は虻蜂(あぶはち)取らずになります。
アルコール依存症者はアルコールだけに焦点を当てます。
そうしないとアルコールのために死んでしまうからです。
ギャンブル依存症者はギャンブルをしないことだけに焦点を当てます。
なぜならギャンブルを止めないと経済的に破綻してしまうからです。
性依存症者は不健全な性行為(マスターベーション・ネットポルノ閲覧・痴漢・盗撮・露出・買春など)を止めることだけに専心します。
なぜならそうしないと(痴漢・盗撮・露出などの場合は)社会的生命が絶たれるからです。
またマスターベーションやネットポルノ閲覧をしていてはシラフの生活を送っているとは到底言えないからです。

②ACはどうやって焦点を定めればよいか?
たとえば「人が怖い」ということが一番大きな問題であると思えば『人への恐れ』に焦点を当てます。
「人への恐れに対して無力です」でステップ1を踏みます。
そして4・5で「自分の恐れの行動パターンはどのようなものか?」を見つけ出します。
ステップ6・7では日々古い行動パターンを使わないで生きていく決心と、新しい行動パターンを使って生きていく決心と助力を神に祈ります。
③新しい行動パターンの実践に神の力を求める
新しい生き方に挑戦なさる多くの方々が異口同音に仰ることがあります。
それは「新しい生き方を実践することが自分にはどうしてもできない」ということです。
できないのは当たり前です。
我力(がりき)で出来たら誰も苦労はしません。
ステップ11には「祈りと黙想を通して、………神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた」とあります。
これらの方々にお伺いしたいのは「神の意志である新しい行動パターンを実践するために神の力を祈り求めましたか?」ということです。
ありのパパは朝起きたときに即座に祈ります。
「すべての人に敬意をもって接することに全力を尽くすという神の意志を実践するために、どうぞ今日一日だけ神の力を与えてください」
日中は25分働いたら5分休むというポモドーロ・テクニックの方法で働いていますので、25分間働く前に「神の意志を実践するための神の力を与えてください」と祈ります。
神の力が与えられなければ人生の歯車は空回りするばかりです。
そうしたら「なぜ神の力が与えられないのだろうか?」と考える必要があります。
日々の棚卸しも必要です。
このように苦心惨憺(くしんさんたん)しつつ毎日を生きているのです。
回復したら「神の力が自動的に与えられる」と考えるなどは妄想もはなはだしいと言わなければなりません。
12ステップによって回復した人で、楽して生きている人は一人もいません。
5.アダルトチルドレンの統合作業のこと
霊的に目覚めたあとは統合作業に取り組みます。
統合作業はアダルトチルドレンの問題リストに書かれてある13の嗜癖行動を一つずつ取り上げて、その症状の軽減をはかるものです。
アルコール依存症なら無力の対象はアルコールという物質だけです。
ギャンブル依存症なら無力の対象はギャンブルという行為だけです。
しかしアダルトチルドレンの依存対象は物質でも行為でもありません。
アダルトチルドレンの依存対象は思考習慣です。
思考習慣とは無意識のうちに行われる振る舞いを指しています。

アダルトチルドレンの問題リストを読まれて思い当たるフシのある方はアダルトチルドレンの可能性があります。
でも大丈夫です。回復の仕方がはっきりと明確化されていますので、それに従うなら必ず回復することができます。

◎回復と平安を祈っています。