12ステップの核心部分は棚卸し作業の4と5です。
この部分をスポイルしていては12ステッププログラムは全く効果を発揮することができません。
長く避け続けた張本人であるありのパパの例から棚卸し作業の大切さを再確認します。
1.執行猶予が切れ掛かった罪人とは誰か?
皆さんは子ども時代の夏休みの宿題を夏休みの最終日まで先延ばしにしておられましたか?
ありのパパはまさにそのような子どもでした。
それと同様にというと語弊がありますが、12ステッププログラムもステップの1から3までをやって、次はステップの10から12に飛びました(笑)。
理由は第一に面倒くさかったからです。
要するに思い上がっていたのです。
自分は大したもんだから、棚卸し作業はやる必要がないと考えました。
今から振り返ると、それは合理化であり、真実は自分自身に直面するのが怖かったのです。
足がガクガク震えて前に進めなかったというのが真相です。
第二に、ありのパパはAC系の12ステップグループに参加していたのですが、 ありのパパが考えるような形で12ステッププログラムに徹底して取り組んでいる人を見つけることはできませんでした。
参加していたグループは実質的に集団療法(グループセラピー)によってお互いの問題を分かち合い、それを共感の力によって回復していこうとしていました。
依存症以外の病気ならばグループセラピーは有効です。
しかし依存症には効き目がありません。
なぜなら依存症には強迫観念と渇望現象があるからです。
強迫観念とは一人でいるときに襲ってきて「スリップしちゃえば良いんだよ」とウソを吹き込む脳の報酬系にある依存症回路の働きです。
また渇望現象はいったんスリップしたら、ブラックアウトするまで延々と続け、決して止めることができない働きです。
この二つの問題が依存症にはありますから、いくら分かち合いで共感しても問題の解決策にはならないというわけです。
これが病院や中間施設に入所している時はスリップしないのに、退所したら速やかにスリップしてしまう人がいる理由でもあります。
2.人生が思い通りに生きていけなくなった
ステップ1から3を何度繰り返そうとも棚卸し作業に進まないなら何の意味もありません。
それはステップ3の最後に「委ねる決心をした」とあることからも明白です。
何を決心したのかというと、それはステップ4以降に取り組むことを決心したのです。
それ以外ではありえません。
ありのパパはそれこそ何万回も「委ねます!」と決心しました。
しかし、そんなものは神の御前で何の意味もありません。
ありのパパはそれにもかかわらず「おっかしいな〜」と寝ぼけたことを言っていたわけです。
そうこうしているうちに人生が思い通りに生きていけなくなりました。
これは当然のことです。
3.もう一人の人に見せない棚卸作業
実はありのパパは依存症からの回復を目指す中間施設で12ステッププログラムに取り組む前に、自分一人で「プログラム・フォー・ユー」を使って、棚卸表を書きました。
これによって恐れは父との関係から、不正直は母との関係から刷り込まれたのであることを知りました。
分かった時は「やった〜!自分の秘密が明らかになった」と喜んだのですが、人生は1mmも変わりませんでした。
中間施設で棚卸し表をもう一人の人に見てもらうときに、こう言われました。
「お父さんとお母さんの項目は後からやることにして、他のものを先にやりましょう」
なぜかと言うと、12ステッププログラムの前提は「他人は変えられない。変えられるのは自分だけ」です。
そうであるのに「父が悪かった。母に問題があった」と他者のせいにしていては実質的に棚卸し作業をやったことにはなりません。
なぜなら棚卸し作業の目的は、自分の性格上の欠点を特定し、そこからくる行動パターンを見つけ出すことにあるからです。
この経験を通して、なぜ一回目の棚卸し作業では自分の人生が変わらなかったのかの原因が分かりました。
ここから言えることは自分なりの12ステッププログラムは効果がないばかりか有害でさえあるということです。
4.白旗を上げて(底付きをして)取り掛かる
12ステップ本を読んでも何を言っているかわからないし、12ステップグループに参加してもプログラムに取り組んでいる人を見つけ出すことができないしで、本当に行き詰まってしまいました。
そのような時に東京にある依存症からの回復を目指す中間施設で土曜日ごとの12ステッププログラムのコースが開催されるということを知りました。
「これが最後のチャンスかもしれない」と考え、片道4時間掛けて毎週出かけて行きました。
交通費の負担も肉体面での負担もギリギリでしたが、その報酬は無限大でした。
本当に人生がまるっきり変わってしまいました。
そして転機的な出来事として変わったというだけでなく、生きている限り変わり続けていける秘訣を自分のものにすることができました。
5.もう一人の人に性格上の欠点を指摘される
100項目程度の棚卸し表を忍耐深く見てくださった「もう一人の人」が「ありのパパさんの棚卸しを聞いていると、本当にワンパターンですね。恐れが動機となって不正直な対応をし、不正直な対応が原因となって人々との間にトラブルが起きる。そのトラブルが起きた人々を自分の側に落ち度があるにもかかわらず一方的に恨んでいる。これは極めて利己的な生き方と言えないでしょうか?」と言ってくださいました。
その言葉がありのパパのお腹の中にストンと落ちました。
その時に思ったことは「自分の人生を支配したカラクリがこれぐらい明々白々に分かったら人生は変わらざるを得ない。変わらないと考えるほうが難しい」ということでした。
今では12ステップに出会う前は自分はどうだったのか(経験)、12ステッププログラムに取り組んで自分の人生はどう変わったのか(力)、これからどのように成長していきたいのか(希望)について分かち合えることを本当に感謝しています。
棚卸表の具体的な書き方をお知りになりたい方は棚卸し表を書くと問題のありかが分かる。棚卸し表はこう書け!をお読みください。
第5ステップパーソンとかシェアリングパートナーと呼ばれる棚卸表を見てもらう人がまわりにおられない方はよろしければありのパパがその役をさせていただきます。

◎回復と平安を祈っています。