ある方が「依存症は病気であるにもかかわらず、性格上の欠点を云々することは『性格に問題があったから、私は依存症になったんだ』と間違って考える危険がある」とおっしゃいました。
この主張には確かに一理あります。
では、この意見を全面的に受け入れることができるでしょうか?
いいえ、決してそれはできません。
なぜなら、そんなことをしたら私たちはソブラエティを維持することができなくなってしまうからです。
今日はこの問題を皆さんとご一緒に考えます。
目次
1.性格上の欠点と依存症とのかかわり
私たちの心の中にある恐れと不正直が人々との間に壁を造り、それによって自分の心に真空状態が生じました。
この真空は心に痛みをもたらしました。
その痛みから目を逸らすために、私たちはさまざまなものに嗜癖(しへき)するようになりました。
そして、その嗜癖は長い期間を通じて依存症に移行しました。
2.性格上の欠点がなくても依存症になることはあるか?
理論的にはありえます。
たとえばアルコールならば人によって摂取許容量というものが決まっています。
その許容量を超えると、誰でもアルコール依存症になります。
また覚せい剤などの薬物依存ならば、覚醒剤を使えば誰でも薬物依存症になります。
これに例外はありません。
「自分は大丈夫」などと考えるのは妄想に過ぎません。
しかし重大な点を見落してはなりません。
それは心が健康な人は決して薬物に手を出さないし、アルコールなどの場合でも普通の人は「一杯飲んだら、もう十分」なのです(一杯とはたくさんのいっぱいではなく、一杯、二杯の一杯です)。
純然たる病気である糖尿病の原因である食べ過ぎにしても、なんの問題もないのに食べすぎるということはまずありません。
人間関係などの問題で、ストレスを解消する他の手段を知らないために食べることに頼ってしまい、そしてついに糖尿病などの生活習慣病になるのです。
3.しらふ(ソブラエティ)を維持するために必要なこと
①短所を取り除いていただいたとしても依存症は治らない
なぜなら脳の報酬系という部位に『快楽を強力に求める回路』がいったん出来てしまうと、その回路は生きている間はなくなることはないと言われているからです。
そうすると、ある人々は「性格上の欠点が取り除かれても、依存症が治らないのなら、短所を取り除いてもらってもしようがないじゃないか」と言われます。
しかし、そうではありません。
②依存症の問題は2つある
それは精神面での強迫観念と肉体面での渇望現象です。
強迫観念とは「最初の一杯」とか「狂気」と呼ばれるものです。
長年ソブラエティを維持できていたにもかかわらず、ある時ふっと「ミルクにブランディーを一滴垂らすだけなら問題ないだろう」と思った人の話がビッグブックに書かれてあります。
その人はブラックアウトするまで飲むことになります。
それは最初の一杯を飲んでしまったら、二杯目を飲まないでいる自由がアルコール依存症者にはないからです。
これを肉体面での渇望現象と呼びます。
12ステッププログラムが効果があるのは、精神面での強迫観念だけです。
どんなに長年熱心に12ステップに取り組んでいたとしても、最初の一杯を飲んでしまったら、あとは他のアルコール依存症者と同様にブラックアウトするまで飲み続けることになります。
性格上の欠点が取り除かれる利点の一つは余計なストレスが掛からなくなることです。
依存症者は勝手に被害者意識を持ち、勝手に相手を恨み、勝手に苦しんでいるのです。
このような一人芝居を止めることの出来るただ一つの手段は自分の中から性格上の欠点が取り除かれることだけです。
そうしたら、余計なストレスから自由になり、強迫観念に対して負けることがなくなります。
③神とともに生きていこうとするときに邪魔になるもの
その邪魔になるものとは、恨み・怒り・恐れなどです。
恨みや怒りは私たちの性格上の欠点である利己主義・不正直・恐れ・配慮の欠如から生み出されるものです。
それゆえ私たちが自分の意志と生き方を自分なりに理解した神の配慮に委ねて生きていくためには、どうしても性格上の欠点を取り除いてもらうことが必要になります。
これは「自分を超えた大きな力が私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった」ことへの神からの応答です。
私たちは自分で自分を治すことができないと無力を認め(ステップ1)、神になら私を回復させることができると信じました(ステップ2)。
まとめるとこうなります。
神の力が私たちの中に流れ込んでくるために邪魔なものがあります。
それは私たちの心の中にある恐れ・怒り・恨みなどです。
これらのものは神と私たちとの間の障壁となって、神の力が私たちに働かないようにします。
それで私たちは恨み・怒り・恐れの原因である利己主義・不正直・恐れ&身勝手・配慮の欠如という性格上の欠点を見つけ出し(ステップの4と5)、使い慣れた古い手を使わない決心をし(ステップ6)、新しいやり口を使っていく生き方を始めます(ステップ7)。
棚卸し表を書くと問題のありかが分かる。棚卸し表はこう書け!
回復の秘訣は「やりたいことをやらない。やりたくないことをやる」
このような生き方をする時、神が私たちとともにおられるようになり、ステップの2の約束が実現します。
そうです。日毎のソブラエティーの更新です。
◎平安と祝福を祈っています。