問題行動の原因は愛情不足ではなく、勇気をくじかれているから

今日は「アドラー心理学入門」(岸見一郎著)をご紹介します。

1.腹が立ったから怒鳴ったのか、それとも怒鳴りたいから腹を立てたのか?

アドラー心理学では、感情が原因で行動が結果であるとは考えません。
私たちが感情をある目的のために使うのであって、感情が私たちを後ろから押して支配するとは考えません。

感情は多くの場合、相手にこちらの言うことをきかせようとするために使うのです。
怒りを使うと相手がいうことをきくだろうと考えて、怒りをその目的のために作り出すのです。
このように感情は私の心の中にあるのではなく、私たちと相手との間にあるのです。

「腹が立ったので怒鳴った」というのが原因論であるとすれば、目的論では「怒鳴るために腹を立てた」と考えます。
ありのパパの個人的経験から言っても、この理解は正しいと感じます。

2.どんな問題行動を起こしているかによって、原因を特定する必要がある

愛情不足が原因なのか、愛情過多が原因なのか、それによって大体は分かるものです。
しかし、問題の本質は愛されているかどうか、というところにはありません。
愛があってもコミュニケーションがなければ、関係は成立しないからです。

①目的論のメリット

原因論に立つとき、その原因は変えようがないことが多くあります。
しかし目的論に立つなら、対処の仕方が明確に分かります。
これが目的(行動の目的を見ていく考え方)論のメリットです。

過去は変えることができませんが、未来なら変えることができます。
また目的は人の中にあるので、過去や外的なことを何一つ変えることができないとしても何ら問題がないのです。

②問題行動の裏にある動機を見る

著者は「罰せられると、自分の居場所がないと感じるようになる。ひいては『この世界には自分の居場所がない。人々は私の仲間ではない。自分の敵である』と感じるようになる」と言います。

不適切な行動は、注目を引くという目的のためになされます。
それに対してどんな形であれ注目を与えることは、不適切な行動を続けさせる原因になります。

不適切な行動にではなく、適切な行動に注目するようになると、子供の問題行動は減っていきます。

しかし、気を付けないといけないことは、注目を与えるというのは、ほめることではないということです。
ほめるという行為は、できている人ができていない人に、上から目線で与える評価であり判断です。
ですから、それをされた人は愉快ではないのです。

○問題行動の原因は愛情不足ではなく、勇気をくじかれているからです。

人にとって最も大切なことは「普通である勇気」です。
人は、この普通である勇気がないので、まず良くなろうと努力し、次の段階では良くなることができなければ、今度は悪くなろうと努力するのです。
そうすることによって安直に「成功と優越性」を手に入れることによって、「普通である勇気の欠如」という問題にふたをして見ないですむようにするのです。

3.劣等感と劣等コンプレックス

劣等感とは「この部分が他者に比べて自分は劣っている」という認識です。
これに対して劣等コンプレックスとは「劣っている自分は生きていては駄目な存在である」という認識です。

①どうやって人は特別でなくても良いと気づくようになるのか?

ある少年は非行に走ることによって親の注意を引こうとしました。
ところが、この少年が病気になり、一年間にわたってベッドに寝たきりになりました。
そうしたところ、必ず誰かが自分を気にしてくれているという事実に気づきました。
自分は愛されていないというのは間違いであり、実は自分は愛されていたと気づくことによって、この少年の問題行動はきれいさっぱり消えてしまいました。

中学のとき突っ張っていた少年は卒業後、造園師になりました。
ある時、仕事先の家のご主人に「君、いくつ?」「十六歳です」「ふうむ、あのな、君いい顔してるなぁ」
少年はこの一言で「自分は特別でなくてもいい」ことを悟ったのでした。

②どうすれば、勇気をくじかれている子供を勇気づけできるのか?

第一の方法は罰したり、しかったりすることによって。
第二の方法はほめることによって。

しかし、これらのやり方は効果がないばかりか逆効果であることが分かりました。

では第三の方法とはどんなものでしょうか?
それは「喜びを共有することによって」「自分の気持ちを伝えることによって」です。
どんなに小さな行為であっても見逃さず「ありがとう」「うれしい」「助かった」と自分の気持ちを伝えます。
これができない親御さんは、まずご自分に問題があることを認め、その問題を克服することが大切です。

「ありがとう」と言うのが当たり前の親に育てられた子は「ありがとう」と言うのが当たり前になります。

③勇気づけに依存する危険もある

理想は「他人の勇気づけがなくてもいい」と考えるようになることです。
すなわち「自分が自分自身に対して勇気づけする人になる」ということです。
そして最も効果的な勇気づけは「生きているだけでありがとう」です。

子育ての目標は、子供が自立し、社会と調和する、そのために人々が自分の仲間だと思え、自分には能力があると思えるようになることです。
そのためには子供が自分の力で人生の課題に立ち向かう援助をしなければなりません。
これこそ、真の勇気づけということができます。

◎平安と祝福を祈っています。

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