(2020/09/28記事更新)人生を楽に生きるには自分を笑うのが一番です。
この記事はホスピスでの豊かな臨床経験を持つ柏木哲夫先生のお話をもとに笑いの大切さを紹介しています。
1.笑いはみんなを元気にする
柏木先生はご自身の経験から笑いの大切さをお話になられます。
・末期の食道ガンで固形物を食べられなくなった40代の患者さんとのやり取り。
柏木先生「トロだったらトロトロって(口に)入るかもしれませんね」
患者さん「私も一日トロトロ寝てないで、トロに挑戦しますかね」
患者のご主人「私はトロい亭主ですが、トロくらいなら買ってきますよ」
このようなやり取りの後、患者さんは実際にトロを二切れほど食べることができたそうです。
単なるダジャレではなく愛と思いやりから出てきたユーモアが人をいやす働きをするようです。
・ホスピス病棟などでは死に行く患者さんを見守るという何とも重苦しい仕事をしなければならないため、スタッフは大きなプレッシャーを抱えています。
そんな中、患者さんの一言がスタッフの心を軽くすることもあったそうです。
患者さん「先生、おかげさまで順調に弱っています」
その時、柏木先生は「私はいたわられた」とお感じになったそうです。
・次はイギリスでのお話です。
末期ガンのおばあさんが医師に向かって「あと二・三日だと思います」と言いました。
医師「天国に行かれるのですね」
おばあさん「天国でも地獄でもどっちでもいいです。どっちに行っても友達がきっとたくさんいると思うんです」
・末期の肝臓ガンの中年女性の患者さん
患者さん「あっさりしたものしか食べられなくなりました」
医師「それはおつらいですね。お元気なころは何がお好きだったんですか?」
患者さん「お金♪」
その場にいた人たち全員が爆笑しました。
あとから、その患者さんはこう言われました。
「家族も看護師もつらそうにしているから、みんなで笑いたいと思ったんです」
柏木先生は「みんな、やっぱり笑いたいんですよ。ホスピスの現場にたずさわる人たちも。いや、むしろそういう現場にいる人間だからこそ、ユーモアのセンスを大事にしたいと思うのです」とおっしゃいます。
2.他人を笑うのではなく、自分を笑い飛ばす
「お父さん、その冗談寒(さむ)いよ」と言われないためにはどうしたらよいでしょうか?
親は子供を笑ってはならない
親が決してやってはならないことのひとつが、自分の子供を笑うことです。
時々、自分の子供をくさしている親がいます。
これは悪気があってやっていることなので言語道断ですが、自分の子供を笑っている親には悪気がないので、よりいっそう悪質ということが言えます。
アダルトチルドレンのミーティングでメンバーが涙ながらに語るのが、子供時代に親に笑い者にされたという話です。
「悪気はなかった」と親は言うでしょうが、悪気がなければ何をしても良いということにはなりません。
ユーモアのある人になるための第一の条件は他人を笑うのではなく、自分を笑い飛ばすことです。
3.自分を笑うために必要なこと
①神を信頼する
上記のイギリスの婦人はなぜ「どっちでもよい」と言えたのでしょうか?
ありのパパの推測ですが、この婦人は「私は何十年も神様を信頼して人生を歩んできた。その間、神様は何一つ私に悪いことをなさらなかったばかりか、いつも良いもので満たしてくださった。このような神様なら、死後についても必ず私に良いようにしてくださると信じることができる」と考えたのではないでしょうか。
②人生の結末を神に信頼し確信する
私たちの人生は最終回が確定しているドラマのようです。
それは天国行きだということです。
色々な悲しいことや苦しいことがある中を通るけれど、結局は天国に行って、めでたし・めでたしで人生は完結することになっているのです。
終わりが分かっていれば、深刻に見える目の前の出来事を笑い飛ばすことができます。
ありのパパは最終回を見てからドラマを見はじめます。
それは最終回がハッピーエンドになっているのを確認してからでないと心臓がドキドキして体に悪いからです(笑)。
最後に実際にあったお話をひとつ。
父親の臨終の席で父親が残された家族に向かって「ほな逝ってくるからな」と言って目をつぶりました。
家族は一斉に号泣しました。
そうしたら何と父親は目をパッチリと開けて「うそうそ。まだ死んでないんや」と言ったというのです。
ご家族は「それ、おかしいやろ!」と総ツッコミ(笑)。
ご自分の死をも笑い飛ばす精神は天晴れ(あっぱれ)と感心さえします。
◎回復と平安と祝福を祈っています。
(この記事は朝日新聞の「グローブ」に掲載されたインタビューをもとに書かせていただきました)