(2020/03/11記事更新)自助グループのミーティングに参加していると「底つき」という言葉を聞くことがあります。
この記事は依存症における本来の底つきとは何を指しているのかについて解説しています。
1.依存症における本来の底つきとは何か?
ある依存症からの回復を目指す施設の指導者が次のように言われたことがあります。
「以前は底つきと言うと『本人が底つきを体験しないと、他の人が何をしても無駄』みたいな言い方がされてきました。これは徹底的に間違った理解であり、結局福祉職の人々が何もしない言い訳に使われていたということも出来ます」
真の底つきとは「こんなことをしていてはいけない。私は回復を目指して歩み始めなければ大変なことになる」と人生のどこかで決断することです。
そしてそのような決断をし、歩みをなし、あとから振り返ったときに「あの時が、まさしく底つきだったんだ」と思うものです。
2.来日したあるオリンピック選手のこと
長野オリンピックのとき、来日したスポーツ選手のなかにアメリカのAAメンバーがおられました。
その方の分かち合いを人づてにお聞きしました。
「あるときお酒を飲んで、気づくと公園のベンチで寝ていました。それが切っ掛けで私はAAに参加することになりました」
この分かち合いは現地のAAメンバーに良い感化を与えました。
なぜならその当時我が国では、幾多の修羅場をくぐり抜けてからAAに繋がるのでなければ回復に本腰を入れることが出来ないのではないかという間違った理解があったからです。
しかしその方は全く異なる考えを持っておられました。
「私と私の家族は、プロスポーツの世界で活躍するために全てをささげて来ました。ですからアルコール依存のために、それまでの努力を水の泡(あわ)にするわけにはいかなかったのです」
彼はアルコール依存にかかわることで専門病院に掛かったことが一度もないそうです。
それにも拘らず、彼は異国の地で行われる競技会に参加しているときでさえ欠かさず現地のAAミーティングに出席されるほどの徹底した熱心さを持っておられるのです。
3.他の回復した人々の経験
ありのパパがプログラムを学んでいるとき、他の方々も「このままではいけない。回復への歩みを始めよう!」と決心したときが底つきだったと分かち合われておられました。
もしあなたが間違って「これ以上ひどい状態はないというところまで落ち込むのが底つきだ。その底つきを体験してからでも回復を決心するのは遅くない」と考えておられるなら、あなたはご自分の人生を棒に振ることになります。
なぜなら「これ以上ひどい状態」などどこにも存在しないからです。
それは底無し沼であり「底無し地獄」のようなものだからです。
回復しようと決心したときが底をついた時です。
私たちお互いは人生の方向を転換して回復への道を歩ませていただきたいものです。
◎回復と平安と祝福を祈っています。