アダルトチルドレンと似ているが違う病気・境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害は、10個のパーソナリティ障害のなかの一つですが、他の人格障害と比べて顕著な違いがあります。
それは自殺念慮が著しいということです。
このような人に、周りの人は振り回されがちです。
それで自分たちの近くに、この障害を持った方が来られても右往左往することなく毅然とした対応をとるために「境界性パーソナリティ障害」(岡田尊司著)をご紹介します。
(当記事では「パーソナリティ」を「人格」という日本語に置き換えています)

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1.境界性人格障害とは何か?

境界性(ボーダーライン)という言葉は、はじめは神経症と精神病の中間領域にいると思われる人々をさして使われていました。
その真意は「まともだけど、なぜか悩んでいる人」と「精神病者」の中間領域におり、援助職の人々にとって扱いにくい人々という意味で使われていたように感じます。

それが少しずつ、正確な描写が出来てきて、今では人格障害の一つとしての「境界性人格障害」をさして使われるようになっています。

2.境界性人格障害は生まれつきではなく発症するもの

アダルトチルドレンは、医療の分野ではなく社会保健の分野から出てきた概念であることもありますが、病気とはされていません。

これに対して境界性人格障害はれっきとした病気です。

これがアダルトチルドレンなどと異なるのは、ある日何かがきっかけとなって発症するものだということです。

3.境界性人格障害の現れ方

私たちが覚えておくべき最大の特徴は、変動が激しいということです。
これは気分の面でも、対人関係や行動面でも、自己のアイデンティティという面でさえも、短い時間に揺れ動き、まるで別人のように変わってしまう傾向があります。

両極端に揺れ動くのが最大の特徴であると覚えておくとよいでしょう。

それでは具体的な特徴を見ていくことにしましょう。

①見捨てられ不安が強い

これはアダルトチルドレンと共通です。
それで、この方々がACの自助グループのミーティングで分かち合いをしても、表面的にはACと同じように見捨てられ不安を訴えますので、一見見分けがつきません。

アダルトチルドレンの見捨てられ不安は「病的」ですが、その場合でも相手の迷惑を考える心の余裕はあります。

しかし境界性人格障害の見捨てられ不安は暴走しがちです。
そして暴走しているときは、相手の迷惑などは眼中にありません。

病的な見捨てられ不安を持っていることは共通ですが、アダルトチルドレンが見捨てられ不安を感じても、それで極端な行動に出ることはまれです。
しかし境界性人格障害の場合は、ほとんどの場合において極端な行動へと走ります。

それ以外にも以下のような特徴があります。

②対人関係が両極端で不安定

③めまぐるしく気分が変わる

④怒りや感情やブレーキが効かない

⑤自殺企図や自傷行為を繰り返す

⑥自己を損なう行為に沈澱する

⑦心に絶えず空虚感を抱いている

⑧自分が何者か分からない

⑨一時的に記憶が飛んだり、精神病に似た状態になる

4.境界性人格障害のカウンセリングがうまくいかない理由

彼らは枠組みがない状態が苦手であるのに、従来の手法は枠組みを取っ払うのが治療の前提であることが原因です。

自己と他者の区別の境界が曖昧なため、自分の考えていることや感じ方は相手もそう考え感じているに違いないと思いこんでいます。
そして本人にとって耐え難いストレスが掛かると、その区別がいっそう曖昧になります。

自分の思い通りにいかないと攻撃されていると思いこむ

カウンセリングにとって回復とか成長と言われるものは「自分の人生が行き詰まったのは他人のせいだと今までは思ってきたが、実はそうではなく自分自身の性格上の欠点が真の問題だった」という視点の転換です。

しかし彼らにとって、それを分からせようとするカウンセリングはまさしく攻撃されている以外の何ものでもなく、従来のカウンセリングがうまくいくはずはないのでした。

5.彼らにとっての援助とは何か?

それは不適切な反応を修正し、適切な反応の仕方を学ばせるということです。

6.なぜ急増しているのか?

社会構造の変化があげられます。

地縁社会の崩壊により、親子関係の問題にブレーキが掛かりにくくなっているということが理由の一つにあげられます。

7.どんな人がなりやすいか?

①強迫性の強いタイプ

②依存性が強いタイプ

③失調型の傾向が強いタイプ

④回避性の強いタイプ

⑤自己愛性が強いタイプ

⑥演技性が強いタイプ

⑦反社会性が強いタイプ

⑧未分化型人格のタイプ

⑨発達障害がベースにあるタイプ

8.いかにして、この人々を支えればよいか?

人格障害は関係性の障害であるため、自分一人では克服できないという性質を持ちます。
これは言い方を換えれば、援助者の関わり方次第で回復も大きく左右されるということでもあります。

①同じスタンスで向かい続ける

長期間にわたって、関わり続けることが出来るかどうかが、もっとも肝要なことです。
これに比べれば、後のものは枝葉にすぎません。

多くのケースで改善が見られるまでに何年もの時間が掛かっています。
このことを頭に入れて、接していくことが大事です。

②本人の主体性を重視する

回復は自分持ち。援助者の考えや期待を押しつけはなりません。
本人を誘導するようなことは極力避けるべきです。

③目的と枠組みを明確にする

境界性人格障害者に対応する場合には枠組みをはっきりさせる必要があります。
もっとも、これは誰に対する場合でも必要なことです。

それがなぜ境界性人格障害者の場合にことさら大切とされるのかと言えば、「私は病気だから仕方ないよね」という甘えを許さないためです。

もちろん甘えさせて病気がよくなる場合もあります。
しかし境界性人格障害の場合は、甘えさせて脱線すればするほど症状は悪くなります。
そのため枠組みを破った場合には援助の手を指し伸ばすことが出来ないことをはっきりとさせておくことが重要になります。

それ以外にも以下の点が大切なことになります。

④穏やかで冷静な態度

⑤先入観や推測で決めつけない

⑥中立的な態度で接する

⑦言葉にとらわれずに本音をくむ

9.リーグ最下位のチームのコーチをするつもりで

①どんな事態にも動じず、安心させる

②逆転の発想を刷り込む

③優れている部分に焦点を当てる

④本人の可能性を信じ、それを伝える

⑤聴くことのテクニックを磨く

10.境界性人格障害からの回復

①これは克服できる病気

本当によくなりたいと、本人が心から思うようになったとき、回復のプロセスはもう半分まで成し遂げられていると言ってもよい。
ただ、多くのケースでそう思うようになるまでには多くの時間を要する。
なぜなら、今までの苦しみを分かってもらおうとしているのだから、治っては困るのである。
だから「そのこと」を周囲が十分に受け止めないかぎりは、意地でもよくなれないのだ。

だが、長いすったもんだの時を経て、やがて自分の傷にとらわれていた思いが、かさぶたのように剥がれ落ちる瞬間がやってくる。
それは三年先かもしれないし、十年先かもしれないが、必ずやってくる。

早く回復できれば、それに越したことはないが、長い時間掛かったから悪いというわけでもない。
長い時間をかけて回復した人は、それだけの大きな試練を乗り越えることによって、深い魅力と不思議な力を手に入れているように思う。

②境界性人格障害の回復の出発点はいったんご破算にすること

これは依存症における底つきと同じ概念です。
これまでの人生をご破算にすることで、本人が自分の人生を取り戻す余地が生まれます。
結局のところ、人生は本人のものであり、本人の意志と覚悟が生まれなければ、本当には何事も始まりません。

③生活の枠組みをしっかり整える

境界性人格障害の改善において何より重要なのは生活の枠組みをしっかり整えることです。

入院や施設での生活によって改善するのは、この部分にかなりを負っています。
行動のコントロールと情動のコントロールは、互いに繋がっています。

④決定的なこと

それは周囲が望んだことではなく、自分自身が望むことを明確にし、それに向かって歩み始めることである。

境界性人格障害の人の行動は、常識的な価値を覆すものとして現れるが、それは、その人を縛ってきたものに対する命がけの異議申し立てであり、その支配から自由になろうとする決死の試みなのである。

この状況に終止符を打つ最善策は、本人を縛ることをやめ、本人が選んだものこそを祝福することである。

本人もまた遠慮せずに自分なりの生き方をすることである。
親の期待に添えないことに罪悪感を覚えることをやめ、自分の幸せの為に生き始めることである。

◎回復と平安を祈っています。

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